フリフロについてー。

 判りづらい箇所がえらい多かったので、蛇足ながらも補足させてもらおうとございます。
 なお、ここに書いたことは所詮本篇に書き切れなかったことなので、絶対ではありません。読んでくださった方が思ったことのほうが優先順位は高いと思ってます。きゅれいしんどろーむ。

全体

 当初の発想としては、私にONE本篇はゲームであることを前提に作られている物語、つう考えがありまして、なら対抗して二次創作であることを前提にした物語を作ろうと思いました。
 で、ONEの元ネタのひとつである「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」とONEの模倣による逸脱であるところの「sense off」からインスピレーションを得て、異なった二つの世界の同時進行という構成をやってみることにしました。
 二つの状態を変移する、という感じからフリップフロップ回路を思いだして、フリップフロップ回路は記憶を保持するためにあるし、響きが好きだからそれをタイトルにしようということになりました。
 どうせ二つあるのなら違うノリにしよう、むしろ違う作者が書いたかのような感じにしよう、と思いました。二次創作には複数の作者さんがいるわけで、それぞれノリが違うわけで、そこらへんの表現だったりもします。BとCで浩平の一人称が俺と僕で違うのも、そのためでした。会話文でのみ「オレ」なのは、それがオリジナル折原浩平の模倣であるため。
 ただ世界Bと世界の果ての文体がちょっと似てたような気もします。もうちょっと変えた方が混乱が少なかったかもしれません。
 二つの話はそれぞれ独立しても成立するように作ってみました。それも上記の理由によるものです。この手の多重ものは、一見まったく異なる話が、じわじわと関連性を見せておいて、終章辺りにおいて意外な角度から関連していることを書くのがキモだと思っておりますが、その辺りはやや弱かったかもしれません。
 なんで世界がBとCでAがないのかと言うと、AはONE本篇だからで、ここに書かれているのはオリジナルであるAではなく、二次創作であるBやCだと言う意味でした。ただ、キノの旅が好きだったものでプロローグとエピローグにAとBのひっくり返しを使ってしまいそのせいではものすごく判りづらくなってしまったようで、申し訳ありません。
 「世界の果て」は二次創作の書き手の例えです。雲はオリジナルで、雲を見て考え物語を紡ぐ、というのが二次創作の表現です。世界の果ての「ぼく」が「きみ」にきいてもらってはじめて、二次創作は誕生すると言うイメージです。
 ところでひょっとして「訊く」は「聞く」ではなく「たずねる」の意味合いなのでしょうか。だとしたら、すごいポカでした。

世界B

 みさおが生きている世界。本篇より二年くらい前のお話。コードネームは「おにいちゃんは心配性」
 もともとはみさおを書いてみたい、というのがはじまりですが、それ以外だと、おおきな不幸がなかったとしても、人はえいえんを願うかな、というのがありました。
 B1はみさおのいる日常風景。しばらく名前を出さなかったのと、ジャンル表記にみさおを書かなかったのは、フェイントというか最後で驚かせるためだったりします。みさおがだよもん星人なのもそのため。ジャンル表記と内容違うやんと言われないかとびくびくしておりました。
 みさおの性格づけは、本篇の回想で結構浩平のことをバカ呼ばわりするような子だったことと、なによりあの浩平の妹なのだから、ということであんな風にしてみました。みさおが生きてるのは本当に運がよかっただけ、という設定です。余談ですがKanonの奇跡もそんなのなんじゃないかと私は思っとります。
 B2は瑞佳登場。えいえんの終わらせ手です。どーでも言いですがここらへん書いてる辺りでジョジョが終わってしまい、「世界が一巡した!」とか「みさお……わたしの名前はみさおです」とか書きたくなる衝動を堪えておりました。浩平くんの冗談ばっか言ってるけど心配性、つうのは本篇みて思ったことでもあります。
 B3は浩平の成長なのですが、文量的に瑞佳に惚れさせるにはちと早いかもと思い、それをなんとかするためにあんな妙に挑戦的な一文を挿入しました。読んだ方が不快感を持たれるのではと心配したのですが、どうか広い目で見てもらえれば幸いです。浩平の葛藤については本篇の心情変化を自分なりに解釈したものなのですが、どうだったでしょうか。
 たぶんあのラストのあと浩平は「そんなこと急に言われても」とか言われるでしょうが、まあ幸せにやってくれることを祈ります。

世界C

 世界Bが軽めのノリを前面に出したため、Cは少し重めに行くことにしました。あと本篇で気になった「浩平の母親」について書いてみようと。本篇よりも数年後の話。コードネームは「煙草すったことありません」
 Cは暗く、かつかなり不幸なので、ジャンル表記に「ダーク・不幸は必須」とのこともあり、どうしようかと悩んだのですが、結局ジャンルはキャラのみにしておきました。
 C1はお葬式。B1からの転調と言う位置合いもあって沈んだ感じにしました。なんか淡々としちゃってますが、この辺りは私の癖によるものだと思います。不幸なシーンはどうも淡々としちゃうのです。
 C2は病院。お母さんの行ってた新興宗教集団はMoon.のFARGOを想定してたり、その崩壊ってのはMoon.だったり。ともあれ過去を焼き捨てることを選んだ浩平が、過去と向かいあう話です。お母さんと会ったときどう反応するのかは少し迷ったのですが、流れるままに書いていたらごく自然に受けいれる、といった感じになりました。最期のシーンは、できるだけ、綺麗にしようと思いました。
 C3は永遠の話で全体のシメです。瑞佳の「食べた」発言は実際に唇でも噛みちぎらせようかと思ったのですが、痛そうなので止めました。全裸で唇から血ぃ滴らせてる瑞佳はビジュアル的には萌えなのですが。
 フリップフロップの解説を頭に載せるのは唐突かとも思ったのですが、前回かのんSSこんぺで思いっきり「タイトルの意味が判りづらい」との指摘を受けてましたので、今回はそうなならぬようにと書いてしまいました。

そんなこんなで。

 フリップフロップでした。やりたかったことは単純に、「作品No2.『春』」と同じに二次創作の肯定でした。そんで、ONE好き好き。
 ちなみにこれが私にとって初のONESSで、たぶんもう書かないかな、と思います。ONEでやりたいことはほとんどやりましたし。とはいえ七瀬とか繭とかはかなり萌えでありますので、そっち方面で軽い話を書きたくなるかもしれません。
 あるいは世界D+「デストロイの季節へ」とか。秋山チックに。