朝。
気持ちの良い朝。
今日も何時ものように朝がやってくる。

私は何時もの様に、何時もの時間。何時もの場所へと歩いて行く。

志貴さまの寝顔は私のもの・・・ふふふふ・・・じゅるりっ・・・
この朝の甘美な一時は私だけのもの・・・

ふっ・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・



と心の中で喜びと妄想を一通り噛み締めて、表面上は落ち着きを全く崩さずに。
私の一日はそうして始まる。

・・・ドタン!バタン!・・・

・・やっ・・!
・・・って〜・・・もの・・・

・・おかしい?
なんだか今日は部屋が騒がしい。

しかも私以外の女性の声が志貴さまの部屋から聞えてくるような・・

耳の錯覚だと思うけど・・
志貴さまの様態が悪くなった時、すぐに駆けつけるのメイドの勤め。
姉さんに頼んで付けて貰った浮気監視兼寝顔盗撮カメラ(けどやっぱり生の寝顔には敵いません)カメラには
今朝はナイチチもアーパー猫も尻でかも何も映ってなかったと思ったんだけど。
(注:当然、本人は知りません。
・・主人の安全を守る為にはそんな事は些細な事です。ナ・・秋葉さまの許可もちゃんと得てますし)
ご都合主義で少しだけ開いている扉からそっと中を窺う。

なッ!!

其処で私は信じられないものを見た。
















鉄残光!(激しく誤字


・・決まりました。
取り合えず
「そんな貴方も10日で出来る!○×通信講座!」
で習った一昔前に流行った格闘ゲームの八割削りの技を打っておく。
後は十連コンボ・・まぁ色々です。

パリンッ!・・・・ドカンバタンゴロゴロゴロ・・・

白くて金髪赤目の謎の物体が直接窓から(注:二階)落ちていった様だがそんな些細な事は気にしない。
私は何も聞かなかった。何も見なかった。
主人の不都合な事(きっと脅迫でもされていたんだろう)は見て見ぬ不利をするのはメイドの勤め。
そして、其れを「さり気無く」処理して主人の杞憂を取り除くのも"冥土"の勤め。


志貴さまは。
口をあんぐりと開けたまま。
木っ端微塵に割れてしまい(どれ位かと言うと、壁から塗りなおして完璧に新しい物と交換しないといけない程度)、
もう役割を為さなくなってしまった窓と背中を向けたままの私を交互に指差している。

・・・クスッ・・間抜け面。
そうしている顔もやっぱり可愛い。
瞬間的に「志貴さま成長の記録アルバムin my脳天」にその顔を之でもかと刷り込んでおく。

・・志貴さまは知らないだろうけど、小学校の時も中学校の時も高校に入ってからも
・・どんな時でも私は志貴さまのお傍に仕えていた。

秋葉さまが初め
「私と兄さん付の使用人は残しておいた。」
と言ったのはその為だ。

・・脳天にはキチンと志貴さまの愛くるしい小学生の時から、徐々に逞しくなっていく記憶が刷り焼いてある。
・・騎馬戦で負けそうになれば、さり気無く遠野家専用の暴れ馬(?)を校庭に放って競技を中断させたり・・
・・負けず嫌いな秋葉さまの体育祭の時もよくやりました・・
・・調理実習では私が料理した物と摩り替えて「有無を言わせず」合格させたり(その年のあだ名はクラッシャー志貴)

・・あぁ!・・懐かしい。


・・当然、志貴さまは知らない事だし、驚かせては行けないので私は影のように姿を見せずに仕えていたのだけど。
この間抜け面をしたレア物ショットも私だけの物。

ふっ・・・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・


と、外的には何事も無かったかのようにまったりと頭の中で回想を済ませる。
・・少し目の焦点が合わなくなって、涎がたれ掛けているような気もするが気のせいです。
背中を相手に向けた入った状態から元に立て。深々とお辞儀をしながら、固まったままの主人に声をかける。


・・志貴さま。おはようございます。

何時もの様に平静を装い、何時もの様に挨拶を交わす。
私にとってこの方とのこの朝のやり取りが毎日の一日を始めてくれる大切な物だ。

・・ほんとは寝起きの志貴さまは可愛らしくてむしゃぶり付きたくなるんだけど
夜に楽しみは取っておいて志貴さまは体の機能が完全でない上、寝起きを襲うのはやはり良くない。

姉さんにも
「翡翠ちゃん。若いのは大変結構なんだけど朝は止めといてね?
朝からそんな激しい運動したら志貴さん心臓止まっちゃうかもしれないし。
ある意味男性としては理想的な死に方なんだそうだけど」

と止められてる。


今日はもうお目覚めでしたか?着替えをお持ちしました。

・・・あっ。うん。

さり気無く顔を上げる時に微笑を混ぜておく。
・・ふふふ。赤くなっちゃってやっぱり可愛い。
之で、志貴さまは何も言えなくなってしまう。

ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・


・・・あぁ・・駄目だ。
その顔を見ているとピンクの妄想が何処までも広がっていってしまう。
・・・・やっぱり此処は襲っておくべき?ねぇ?どうよ?

当然、秋葉さまと志貴さまのリンクは切ってある。
・・其れだと死んじゃうって?
問題ナッシングのドレッシングの柚子ポンです。


・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・その。

私と志貴さまは"いたしちゃって"ますし。
完全に秋葉さまから供給を受けなくても志貴さまは動けるようになっている。

・・その。
当然私との繋がりを毎日深めておく事は大事ですけど。


後、姉さんに言って薬をもって(志貴さまに新薬を試すのは姉さんの趣味みたいな物)
リンクを感じにくくする様な体質に変えて貰っています。


それと。

今私 



結界




張ってますから。
之で完全シャットアウトの3段構えです。

これも通信(以下略・・で習いました。
ほんと、何でも電話一本でそろう便利な世の中になったものです。 

埋葬機関と言う所が主催していて、尻で・・志貴さまの学校の先輩が教えに来てくれました。
何でも、資金は各自現地調達とか。
カレーの現物支給のほうが・・とか何とかブツブツ言ってましたがよく意味が判りませんでした。


では志貴さま。居間でお待ちしております。

そう言って、微笑み一つ残して部屋を去る。
ふふふ・・今日も掴みはおっけい〜♪





・・・そうだ。あれ位でどうにかなるとも思えないけど、
庭に転がっているであろうあーぱー猫を掃除しとかなきゃ。


まぁ。そんな様々な事を考えつつ、踏まえつつ。
今日も何事も無く(?)何時もの朝が始まっていく訳です。



之が遠野家の。
遠野志貴の周りで起こる。
何時もの朝のひとコマ。






2001.10.14


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