プレミアとの出逢い


注意) これらの文章は、2000年の開設に際し書いたものです。


小鳥を飼ってたせいでペットショップにはよく足を運んでいました。
そこで見たおかしな動物、「プレーリードック」に目が行った。
穴を掘って集団で生活をしている可愛い生き物。
値段を見れば4万円だ。お店の人が「可愛いけど、どう?」と言いました。
プレーリーは今までにもお店で何度か見かけたり、テレビの番組でも何度も見たので知っているけど、 一度として飼いたいと思った事などないのです。
関東近辺の動物園にはだいたい行ってますが、プレーリードックが居た記憶さえないのです。
確かに動物は野生の生き物でさえ何でも好きですが、プレーリードックはそれ程に、 一緒に暮らすには興味のない動物でした。
それから後もペットショップには何度も行きましたが、いつもそのプレーリードックがいました。
興味がなかったせいか、あまりその子のゲージには近づきませんでした。
「まだあのプレーリーは売れないんですか?」と聞くと、
「安くするからどう?」とお店の人が言います。
欲しければ高くても買うけど、いくら可愛くても飼う気がないのだから、気持はNOでした。
売れない動物なんて今までにも何匹もいた。犬やネコ、etc.....。
わたしはすぐにそのプレーリードックの事は忘れました。

その後も2〜3ヶ月に一度はペットショップに行っていましたが、 そのプレーリーへの興味も関心も湧かず、記憶にも残ることなく一年と数ヶ月が過ぎました。


そしてそんなある日の事、いつものようにペットショップに行くと、 そのプレーリーはやはり狭いゲージの中で丸くなって寝ていました。どっちが頭でどっちがお尻か分からない。 その子に声をかけるとゆっくり頭を上げ、そして、わたしを見ました。その時、妙な事に気付いたのです。
普通、売られてる動物は人間が構うと嬉しそうにじゃれついてきます。 しかし、その子はそんな気を引くアクションは何もしないで、哀しそうな目でジッと見つめ返すだけでした。
暫くの間その子の前で様子を見ていると、エサを食べながらも依然として哀しい目と表情でわたしを見詰めていました。

「哀しい目」。そんな事を感じたのは初めてでした。
どうしてそんな目をしているのか、なぜそれを感じるのか、 まるで、作り話のような感じすらしていました。
その後、自宅に戻ってからもそのプレーリードックの哀しい目が忘れられませんでした。
いくら動物が好きでも、プレーリードックの事なんか何も知らないのです。 穴を掘って暮らしてる事以外に何も知らない。まして、子犬ほどもある生き物なんて飼うにも場所がない。 しかし、あのまま放って置くにはあまりにも可哀想だ.....。

生き物は普通、子供の頃から飼わないと懐かないと言います。しつけも難しいと。
あの子はすでに半近くもペットショップで暮らしてたのだから、 飼うとしても思い通りには行かないと覚悟しなければならないのです。
ただ、世間で言われている躾などともかく、げっ歯目なので、それもハムスターなどとは違って、 噛み付かれたら指の一本くらいは簡単に噛みちぎられてしまうと考えられました。
それでもそのプレーリードックの哀しそうな目と表情が脳裏に焼き付いていました

様々な事を考えたあげく、
「あのままペットショップに居るより、わたしと暮らした方が、 あの子のためにひとつは何か余分にしてあげられるかもしれない」
そして、「噛み付くのならそのように飼えば良いのだから」
これまで他の生き物を飼っていたある種の自信でそう言った結論を出すと、 あのプレーリードックを最後に見てから一ヶ月経った日曜日、ペットショップまで自動車を飛ばしました。
「売れてしまったのならそれで良い。もし居たら連れてこよう」
と考えながら。。。

ペットショップに行くと、やはりあのプレーリードックは狭いゲージの中にいました。
お店の人に話を持ちかけると、そのプレーリーをゲージから出してくれた。
わたしはその子をそっと抱きかかえるとひざに乗せたましたが、 その子はすぐに仔猫のように、わたしの洋服の隙間に頭を入れてもぐって来ました。
「これからわたしと一緒に暮らそうか」
と声をかけながら、その子の背中を撫でました。
噛み付く様子もなければ逃げる様子もなくジッとしていました。

ウチに連れて来て、その子をゲージから出し部屋を散歩させました。
数ヶ月の間、狭いゲージで暮らしてたせいか、歩くにもヨロヨロしていました。
それからも、その子は暫くはしっかりとは歩けず、足腰が完全に弱ってるようでした。
しかし、思いがけなく不思議な巡り逢いをした彼に、わたしは日が経つにつれて夢中になりました。 そればかりか、わたし自身が彼から色々な事を学んで行きました。
何よりも、これまでの生活を根本的に変えられてしまったのだから、恐るべき存在と言えましょう。

あの当時の哀しげなあの目や表情は、今でも時折想い出します。
一緒に暮らしてからはあのような目はしなくなりました。
ペットショップで暮らすより、すこしは余分な心地よさを味わってくれてるのかと、 そう思いこんでしまうくらいです。
その代わり、すねるような目と表情でわたしを見る事がよくあります。
ゲージから出しても構ってやらずに他の事をしてる場合、彼はそのお得意の表情をわたしに向けるのです。
「ぷーちゃん、ごめんね。一緒に遊ぼうね」と言って構おうとすると、 彼は横目でわたしを見て逃げてしまう。 どれ程わたしが可愛いと思っているのか、彼にもおおよそは分かってるはずなのに。。。

名前をプレミアムと付けたつもりでいたが、いつの間にかプレミアになっていました。 そして自然とぷーちゃんと呼ぶようになっていました。
もっとわんぱくで我がままになって欲しいと思い、「おぼっちゃま」とも呼んでいます。