〜 プロローグ 〜



「………………」

「……約束」

「……約束、するから……」

「…………」



 もう何年も昔の事を、夢に見る事がある。

 かつて本当にそれがあった事なのかどうかすら、はっきりとは覚えていない事なのに。あるいは、思い出したくなどないはずの、辛く悲しい記憶なのに……。

 それなのに、目が覚めたとき、なにかとても大切なものを失くして来てしまったような気持ちになるのはなぜなのだろう。自分はあの日、なにを忘れて来てしまったのだろう……。

 それが思い出せないのは、心の傷が時に癒されつつある事の証なのだろうか。昔流した涙が、あの日に続く小道を記した地図を滲ませてしまったからなのだろうか。

 それとも。

 思い出たちの方が、見つかってはいけないのだと思っているから……?

 だけど、本当は。

 忘れられたくなんかない。

 本当は、ずっと一緒にいたい。

 思い出たちは、そう想っているかもしれない。

 だから、目が覚めればやがて薄れて消えていってしまう儚い想いだとしても。

 いや、あるいはだからこそ。


 悲しい思い出たちは、夢のなかでだけ、逢いに来てくれるのかもしれない……。

To be "Sweet Tangerine -Graduation Album-".



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