The garden of Tangerine

〜 みかんの木の花壇 〜


・・・・・・!! み・・・・・・。
ご主人さま・・・・・・!!
みより・・・・・・!? なん――その格好・・・・・・いや、それより・・・・・・。
・・・・・・。
みより・・・・・・。
――昨日ね、あの店の店長さんから電話があったの。
え・・・・・・!?
お店に、指輪を買いに来た子がいると。ずっと昔の約束を思い出す魔法がかかった指輪・・・・・・。「Reminiscence」という名の指輪を。
このみ、メルルも・・・・・・!?
黙っててごめんね。だから・・・・・・あたしたちで昨日のうちにがんばって用意したの。おにいちゃんとみよりちゃんのために。
と言っても、あたしたちで用意したのはアクセサリーとかだけだけど。みよりは、みよりだけの白い服をもう持ってたから。どこで見つけてきたのかは知らないけどね。
ご主人様がずっと探していらしたのは、やっぱりこの服だったんですね。
ウェディングドレスって、買ったらすっごく高いんだよ〜。あたし、実はみよりちゃんてどこかのお姫様とか言われても、もう驚かない事にするぅ。
・・・・・・。
ほら、おにいちゃん。みよりちゃんが待ってるよ。
あ、ああ――みより・・・・・・。
ただいま・・・・・・。ごめんね、この白い服、どこにしまったのか忘れちゃって、帰ってくるのに時間かかっちゃった・・・・・・。
あは、あいかわらず、おっちょこちょいだな。
えへへ☆ でも、わたし、ちゃんと帰ってきたよ。昔みたいに真っ白な服を着て、みかんの木のそばで待ってたよ。約束、したんだもんね・・・・・・。
ああ。もう、どこにも行かないよな?
・・・・・・わかんない。だけど、わたしが「想い出」でも「夢」でも・・・・・・わたし、やっぱりあなたといたいんだもん。手をにぎっていてくれてれば、きっとはぐれないよね? それにわたし、ちゃんとここに帰ってこれたんだもん。あなたが守っててくれた、小さな白い花が咲く木がある限り。きっと何度だって、帰ってこられるよね?
うん・・・・・・。迷子になったら、俺が探しに行ってやるから。
え〜、いつも迷子になるのはご主人さまのほうでしょ?
じゃあ、やっぱりふたりで一緒にいないとだな。
うん、ずっと一緒・・・・・・!!
このみかんの木のそばで・・・・・・。あ、ねえご主人さま。みかんの花言葉って、知ってる!?
え、いや・・・・・・そんなの、あるのか?
あのね、「ピュアな心は愛の心」って言うの!
・・・・・・またそういう甘ったりぃ。
くすっ☆ ご主人さま、甘いもの好きでしょ!?
――うん。じゃあいちばん甘いのは、お前かな・・・・・・
・・・・・・!!
・・・・・・・・・・・・・
え、うそ、するならするって言ってよ〜!
や〜、大胆ねえ。もうお腹いっぱいごちそうさま。
〜〜〜〜〜!
・・・・・・や、やだ、からかわないでよ〜!
というより、あてられてるんだけど。あ〜、暑い暑い。
いいな〜、みよりちゃん。ねえ、結婚式の本番のときはあたしにブーケちょうだいね。
・・・・・・。
メルルもそんな顔しないの。アレよりいい男は他にいっぱいいるから。
はい・・・・・・あ、いえ、はいというのはそういう意味ではなく――
いいからいいから。しょうがないよ、これっばかりは。
・・・・・・はい。そうですね、みよりさん、きれいですから・・・・・・。
――ご主人さま。
ん?
あのね、わたし、もっともっとあなたを好きになりたいな・・・・・・。今まで、ずっとがまんしてたんだもん・・・・・・。
じゃあさ、まずはその「ご主人様」っていうの、やめないか?
あっ、そっか、そうだね・・・・・・。

あのね、――わたし、あなたを愛しています・・・・・・!!



 目には見えないけれど。
 とてもゆっくりかもしれないけれど。
 想いは、広がってゆくものなのだから。
 思い出してください。
 そして、もう離さないでください。
 あの頃の想い出を。夢を。

 愛のぬくもりを・・・・・・。

 とげだらけの小さな白い花が、やがて暖かい色をした甘い実に育つように。
 時にはその皮は堅く、時にはその実は酸っぱい事もあるけれど。
 けれど、それは寂しい冬の季節を越えるため。ひとりきりの夜に、朝を待つため。

 やがてその実は、春に新しい命を芽吹かせるのだから。


 ――これは、そんな甘いみかんのような物語――






――La Fin――