木の器

 さほど大きくない、巾も不揃いで厚さもまちまち、長さにしたら40cmにもみたない木材を作業台の上にかき集め、適当な形にエンピツで墨をつけ、かたっぱしからほじくり始める。電動工具や手道具を持ち出して、木にくぼみをつけていく。

日頃から扱う木材のほとんどが堅い種類ばかりなので、刃物も音をあげるが、掘り出す人間の方も根気が必要だ。

 内側の凹んだ面をあらかた仕上げると、ある程度の肉厚を残して外側の不必要な部分をこそぎ落としていく。用途としての安定した形状も求められるので、デザインという冒険より、穴に即した形といったところに大体が収まる。
 
生地のままだと、焼物の器よりも軽いかな?と思うものもある。それも木の特徴だが、そのまま水分の多い汁物などを盛るには、使った後の手入れが大変だし、汚れも落ちにくく、耐久性もわるい。
 
食物をよそう食器として考えると、漆塗りにかなうものはなく、生漆を塗っては乾かし、裏表に3回ほど塗膜を重ねると、つややかな面が現れ、耐水、油、耐熱、ともに優れた、土器を考え出す前からヒトは使っていただろう、木の器が出現する。
 
旋盤を使った、ろくろ加工にすれば量産もきくし、形だって、こんなふうにゆがんだりしないと。作業をひととおり終えて、手間のわりには仕事内容がわかりにくい器を使って、夕食を摂りながらふと思った。