木の工房から

  「隣村のマヨネーズやでそば打ち大会があるんだけど行ってみねぇかい?」と、鶏飼ってるタダーキに誘われ、天気も良かったので頃合いを見計らって出掛けて行った。生ビールが出てきたり、枝豆をもいで、茹でたてを食べたり、藍染を一式持ち込んで、染色教室みたいなこともやっている。そばも打ちたてだから、ということばかりじゃなくて、うまかった。
 何年かして、マヨネーズやの松田さんが土蔵を移築して、季節の野菜料理を食べさせてくれるお店を開いた。そば打ち大会のとき、インドへ行くんだとか、なんとか言ってたゆみちゃんが、調理場長みたいになっているのが、おかしくて、まだ正式には開店していない12月の晴れた午後、珍しくオートバイで通りがかったら、準備が整って、お店の試運転をしているところへ寄らせてもらった。
 2階の板の間が調度よい展示場のようになっていて、何度か行くうちに、何かやらないか、という話が出て、2002ワールドカップの年、JFAサッカーニュースの表紙画が額縁に入ったのを私が持っているということで、3月に飾ろうという事になった。
 お店、ななくさの庭の2階はその後ギャラリーとして使われるようになり、絵画、彫刻、布、焼物などの展示会が地元の人達ばかりでなく、催されるようになった。
 
 この夏タダーキの所で松田さんと会う機会があって、木の器があるのだけどと話すと、空いているときに展示すれば、ということになり、9月、秋一番の展示会を催すこととなった。漆の器だけでは場所もふさがらないだろうから、壁には額縁もぶら下げて、ベンチやロッキングチェアを配置すれば少しは雰囲気も出るかと思う。

 私は、塩、胡椒、オリーブオイル、ワインビネガー派というか、マヨネーズを沢山食べる方ではないけど、ハチミツが入っているということだけで、松田さんの作るマヨネーズはマヨネーズではないという人が現われ、お役人が税金を使って委員会とかいって難しい会議を開いて、専門家の方々も本当にそんなこと真面目に討論する時間があるなら、自分のしたい研究に時間を使った方が為になるんじゃないの、と思う。
 
 日本のモノ作りが、こんなに大変な思いをしているときに、いい物を創ろうとしている人を、書類の中の条項に不備を見つけるみたいなやり方で、しばり上げることは、これから新しく何かを始めよう、小規模でも頑張っていこうという人たちの意欲をそいだり、芽を摘むことにもつながっていると思う。