南アルプス北岳

 

2006年12月30日〜2007年1月1日 

メンバー L宮脇、森田

12月30日 夜叉神トンネル6:00 池山御池14:30

12月31日 起床3:15 池山御池出発5:15 北岳12:45 池山御池18:15

1月1日   池山御池9:30 夜叉神トンネル16:00

 

12月30日

 前夜は夜叉神峠登山口の駐車場にて仮眠。5時に起床して6時に出発。夜叉神トンネルは、冬季閉鎖でシャッターがおりている。それは解かるが、人が通る為の扉にまで、パイプが溶接されていて、通りにくくなっていた。一体何の為にこんなことをしたのか?おかげで大きなザックを通すのに苦労させられた。

 いくつかトンネルを過ぎて、林道建設工事で亡くなられた方達の慰霊碑の所で休憩する。ここからはるか彼方に、雪をかぶったボーコン沢ノ頭とおぼしきピークを望む。稜線はまだ雲に隠れてはっきりとしない。休憩の後すこし進んだ所で、林道から鷲住山へ取り付く。ここが野呂川への下降口になるのだが、「南アルプス市」と書かれた赤布が付けられているだけなので、地図を見ずにぼんやり歩いていると通り過ぎるかもしれない。

 少し登ったあと、野呂川まで一気に標高差350mを急下降する。勿体ないと思うが仕方ない。下山日にまたここを登り返すのかと思うと気が重い。発電所脇の長いつり橋を渡って対岸の林道に上がるが、この登りはちょっと荒れていた。今度は野呂川の右岸を進む。つららの下がったトンネルをいくつか抜けると「あるき沢橋」に着く。

 ここがつり尾根の登山口になる。いきなりの急登で息があがる。なるべく歩幅は小さくとる。長い長い登りが続く。高度を上げるとやがて雪があらわれてきた。アイゼンを付けるほどではないが、急傾斜なところに中途半端な雪の付き方なので、帰りは転倒に気をつけなければならない。

 高度を稼ぎ池山御池近くになっても大した積雪にならず、今夜の水がとれるか心配になってきた。避難小屋は池のほとりにあった。数張りのテントが張られていた。我々も2、3人用のテントを張る。今日の夕食は「中華丼」だ。レトルトで重かったが、とてもおいしかった。そして宴会。

 12月31日

5時15分、まだ真っ暗な中を出発。最初は緩やかな樹林帯の斜面だが、やがて急登になる。今日は頂上ピストンなので荷物は軽い。しかし苦しいものは苦しい。ここは我慢して登り、標高2320m辺りで尾根上に出て傾斜が落ち、トラバースに移る。2372mの「城峰」からはこれまでの北西から西へと進路を変えて一旦鞍部まで下がった後は、長い登りが延々と続く。

 ニセピークを越えた後、やっとのことで「ボーコン沢ノ頭」に辿り着く。ここで初めて北岳の雄姿を望むことができた。やはり南アルプスは山深いのだ。まだまだ北岳山頂は遠い。写真を撮ったらすぐに出発した。

 

 

 

 

 

 

 

緩い登り下りのあと「八本歯のコル」に着く。ボーコン沢ノ頭からのバットレスも良かったが、ここからの雄大な美しさは、ただごとではなかった。高度感といい、緊張感といい、ただただその凄みに圧倒されるばかりだ。ここからのアングルは幾度も写真で見てきたが、現実に対いあってみると、その素晴らしさは、とうてい写真などでは切り取ることなんてできないと実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ悪場である八本歯の通過だ。最初はバットレス側に微妙なトラバース、一応用心して一人ずつ通過する。次は岩稜の左側をほんの2mほどクライムダウン気味に巻く。大したことはないが、初心者がいる場合は、ザイルで確保した方がよい。もし落ちれば、まず止まらない。あとははしごや、固定ロープが付けられた所もあるが問題ない。

 八本歯のコルを過ぎると急登になり、北岳山荘への分岐点に到着。ここからは必要最小限の荷物だけで頂上を目指す。ひとつにまとめたザックは森田さんが背負ってくれた。あと230mを残すだけだが、これがきつかった。しかし、急斜面をあえぎながら登っているときも、もうすぐそこが頂上だと思うとなんとか頑張ることができた。

 そしてついに頂上に到着。本邦第二の高峰のピークだけに展望は抜群で、北アルプス、中央アルプス、乗鞍、そしてこの北岳より南に延びる間の岳、農鳥岳、塩見岳などが連なる。いつまでも見飽きることはないが、今日の行程は長い、記念写真を撮り早々に下山にかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急傾斜のところでは特にアイゼンをひっかけないように気をつけて下る。突然、富士山へ登っている石川さんの声が無線機から聞こえてきた。石川さんと深澤さんは、現在6合目を下山中とのこと。行動予定を確認しあって交信を終える。60km以上も離れているのに感度は良好だった。

 八本歯のコルの悪場を慎重に越えて振り返ると、けさバットレス第4尾根の中間部にいた3人パーティーはすでに頂上直下まで登っていた。やるなぁ〜と思った。森田さんは、よほど刺激を受けたらしく、目はバットレスの彼らに釘付けになっていた。

疲れた体にムチ打ってボーコン沢の頭までがんばる。そこからはもう下り一方になるので楽になる。 「城峰」まで長い下りが続く。日没までに少しでも距離を稼いでおきたいと、極力休みをとらずに下降を続ける。あきあきするほど歩いたすえに、やっと鞍部に着き、城峰への登り返しを経て池山御池へ戻る。本当に疲れた。テント場に着いたのは18時15分。行動時間13時間となった。

 

1月1日

今日は下山するだけなので、朝はゆっくりと支度する。アイゼンは着けずに出発する。100リットルの大ザックはまんぱんである。あれだけ食料が減ったに変だ。しかし、間違いなく軽くはなっている。いつものことだが、両肩に背負いだこができて痛い。

 下り始めてすこしの間だけ緩やかだが、すぐに急下降となる。1時間もすると雪はほとんどなくなってきたが、かえって滑って転倒しそうになって怖い。一昨日はこれほどの急登を重いザックを背負って、よくもまあ登ってきたものだと自分でも感心する。いくら下っても着かないと感じた長い下りも、なんとか昼前には「あるき沢橋」まで下りきる。

林道を歩き、発電所のある河原まで降りてつり橋を渡り、ここから標高差350mをまた登り返す。いい加減疲れている中、これは本当にこたえたが、途中で休むとよけいにつらくなるので休憩なしで鷲住山までのぼり返して林道へでる。もうここまでくるともう終わったのも同然だ。林道歩きの途中、振り返るとすでに遠くなった北岳や間ノ岳が白峰の名のとおりに秀麗な姿でそびえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

林道を一時間ほどで夜叉神トンネルを抜けて駐車場にたどりついた。本当によく歩きぬいたと思う。充実した山行で新年を迎えることができた。パートナーの森田さんに感謝。