2006年6月4日 谷川岳 一ノ倉沢 変形チムニールート ロッククライミング

メンバー L宮脇、森田

コースタイム 出合3:45 取付点4:45 登攀開始5:00 終了点10:50          6ルンゼ下降点11:50〜13:00 釜形ハング下15:00 出合17:00

 

森田さんから「一ノ倉沢行きましょうよ!」とさそわれた。老いのしわをたたんだ身で、今さら一ノ倉沢でもあるまいにと思ったが、ヘビみたいな目でせまられ、うっかり行くとこたえてしまった。

前夜のうちに一ノ倉沢出合まで行き車の中で宴会。入会した頃は全然飲めなかったが、この頃はワインの小瓶を空けるくらいは楽勝だ。会に入ってずいぶん鍛えられた。明日は早いので10時に就寝。

6月4日、午前3時に起床。よく眠れた。沢音に混じって「夜鷹」(色っぽいお姉さんのことではない)のキョン、キョン、キョン、キョンという鳴声が聴こえる。たしか2年前に来たときにも聴いた憶えがある。森田さんに教えるが、どうでもよさそうな顔だった。

今年は並外れて残雪が多い。雪渓を歩くうちに明るくなってくる。登攀中に落石を受けるのがいやさに、ピッチを上げ途中3パーティーほど抜き、烏帽子奥壁には一番に着いた。

取付点は、中央カンテの取付点をすこし過ぎた所。リングボルトとアゴ付きのRCCボルトが一つずつ横に並んでいた。見上げると上部で岩がかぶるようになっていて、左に回りこむような感じなので、ここで間違いないと判断した。(昔登ってるが全然覚えていない)

5時に登攀開始。ネットでは1ピッチ目と2ピッチ繋げて登っている記録がいくつかあったので、我々も繋げて登ったが、ザイルの長さがギリギリで、トップの交代に苦労した。ここはちゃんとルート図通りにピッチを切って登るべきだ。

2ピッチ目(ルート図では3ピッチ目)は宮脇がトップで登る。バンドから、左のルンゼ状のところに取付いたが、部分的に濡れているところがあって、最初はちょっと緊張させられる。でもあとは簡単。頭上には「変形チムニー」見え出した。ザイルの残りを確認したうえで、ルート図の3ピッチ目と4ピッチ目を繋げて登り「変形チムニー」の基部でピッチをきる。

いよいよこのルートの核心部である「変形チムニー」だ。森田さんが順調にザイルをのばし、抜け口は左から突破した。次は自分の番だ。さいわいにも左側の壁はあまり濡れてない。チムニーに入って途中から左壁に背中を押し付けてのバックアンドフットでにじりあがる。ピンはけっこうあった。抜け口は逆に体を左向きにして抜けた。それほど難しくは感じなかった。

4ピッチ目(ルート図では6ピッチ目)は、変形チムニーの上10m位あがってから中央カンテに向かってトラバースするが、ここはランナアウト気味。墜ちたらかなり振られてしまうだろう。ちょっと怖かった。中央カンテルートに合流して、胸に付けた無線機でビレー解除と連絡。

 

時間が早いせいか中央カンテに合流しても誰もいない。昔登った滝沢スラブの写真を撮ったりしてしばし休憩。

中央カンテの6ピッチ目にかかる。ルンゼ状からチムニーをこえていくが、変形チムニールートに比べると、岩が脆くなったような感じだ。7ピッチ目、垂壁の下を左に大きく巻いて、正面ルンゼ側によってから右に戻りながら登る。ヌンチャクのスリングは長めにしてザイルの流れに気をつける。このピッチはやさしいが、岩はもろく、落石を起こすまいと緊張する。

中央カンテルートの核心部である8ピッチ目、核心部はスリングが沢山ぶらさがっていた。かぶったクラックを乗っ越すと右に四畳半テラスだが、昔と比べずい分狭くなったような気がする。森田さんは、ここがテラスと気づかずに通過し、そのすこし先でピッチをきっていた。全然テラスに見えないので無理はない。

9ピッチ目は凹状の中のクラックを左上する。ここは簡単だ。10ピッチ目は階段状を左上。11ピッチ目は左から大きく回りこむと、傾斜がおちて烏帽子岩の基部に着く。懸垂支点がある。昔はあと1ピッチ行ったが、ここで終了とする。

ここから空中懸垂1回でスラブに降り立つが、不安定な所なのでそのまま数メートル離れた支点で自己ビレーをとる。

ここから6ルンゼ下降点へ向かうが念のためにザイルをつける。草付き帯をトラバースすると、フイックスロープが長く張られていたが、踏跡のない完全なヤブこぎだ。けっこう腕力を使う。もしかしたらヤブに入る所で、もう1段下がればちゃんとした踏跡があったのかもしれないが未確認。

6ルンゼをのぞくと1ピッチ下で詰まっていて、なかなか下降にかかれず1時間くらい待つことになる。どうも南稜終了点から懸垂下降した人達が途中から入ってきているように見える。

先行パーティーがきれたので、下降にかかる。このルートの下降はよくザイルの回収ができずに登り返したりするパーティーが多いらしい。もしそんな事態になったら目もあてられない。我々は慎重に下降する。

1回目、2回目はまっすぐに下降するだけ。3回目は15mくらい降りてから、ちょっと南稜側へ回り込んだところの支点で切る。4回目はそのまま南稜側を下降。つぎは傾斜のゆるいところを20mくらい懸垂。ここで一旦ザイルを巻き、衝立側につけられた草つき帯をふみ跡にしたがって降りる。

5回目の懸垂下降は完全なガスの中、南稜テラスも見えない。6回目の懸垂は、南稜テラスを避け、釜形ハング下に向かって下降。やっとのことで長い懸垂を終える。かなり気をつかった甲斐あって、一度もザイルはひっかからなかった。あとは濡れたスラブとテールリッジを慎重にくだり、雪渓を急いで下降して駐車場に戻った。