目的

明神岳主稜(テント泊縦走)

登山期間

200653日−55

参加者氏名

L深澤巧、高田兵庫、熊谷季久、石川敏朗

天候

快晴

ルート図

◎:幕営地   稜線上の矢印先:ピークおよび下降点

国土地理院地形図閲覧サイトよりダウンロードした1/25000地図にルートを書き込んで製作した。

経過・感想など

準備

深澤さんから明神主稜+岳沢ベース奥穂高南稜の誘いがあり、強力メンバー+石川の4人パーティーが結成された。

当初計画は予備日を含んで45日、おまけに簡単とはいえクライミングを含んでいたため、料理人高田さんのいる山行にしては珍しくアルファ米主体の食料計画となった。

さらにテントも軽量(エスパース マキシム 4-5人用)のものを選択し、クライミング用装備も切り詰めた。それでも各自の装備はなかなかの重量になりそうだ。

山渓20047月号に記事があり明神はテントかついでの簡単バリエーションルートらしい。念のためインターネットで検索してみると明神東稜の記事は沢山見つかるが主稜はまったく見つからない。まぁいいか。

5/2(快晴) 移動

寝不足に弱い石川の希望で集合時間は早めの17:00。熊谷号は装備でふさがって後ろが見えないが、いつものように高速道路を快調に飛ばして21:00頃沢渡第一駐車場到着。まだ駐車している車は少ない。高田さん差し入れの銘酒などで盛り上がり23:00頃就寝。

5/3(快晴) 明神五峰台地まで

    写真1 沢渡第一駐車場(5/5)    写真2 上高地からの明神岳(5/3

予報どおりのすばらしい天気。おまけに桜まで咲いている。(写真1)こいつは幸先がいい。

総長から駐車場は満杯で駐車スペースを開けるために、急いで準備を済ませて出発。

とはいっても7時過。ちょうど待ち構えていたバスで上高地へ。

大勢の観光客とすれ違いながら川岸にでると、目の前にデッカイ明神岳(写真2)がそびえている。ありゃ?ずいぶん険しいんじゃないの?本当にあそこに登るんだっけ?

快調に林道を歩いて行くとすぐに岳沢方面の分岐。そこには残雪が多いため岳沢ヒュッテ休業の旨を知らせる札があった。こりゃあ岳沢まで降りてもビールは無しか。などと気楽な話をしながら歩いてゆくとすぐに雪上歩行になる。

    写真3 デブリの壁(5/3)        写真4 デブリ本体(5/3

ようやく林から沢に抜け出すところにはものすごい雪の壁(写真3)がふさいでいる。

その向こうにはものすごいデブリ(写真4)が広がり登山道は影も無い。

まるで巨大なブルドーザーでなぎ払われたような光景だ。

川の中州のように残った部分を横切って少し登ると前明神沢。(写真5)

雪崩が怖い熊谷・石川組はさっさと尾根に上がりたいと言うが、老練二人組みはもう雪崩は落ちきっているから大丈夫とどんどん上がって行く。確かに谷両岸上部にはもう落ちるような雪はなさそうだし斜面は急で稜線の木々も密生しているようだ。

標高2000m付近で左岸に傾斜のゆるい雪渓が現れた。そこを詰めて稜線まで上がって一休み。大分登ってきような気がするがまだまだ半分だ。もうこの先は楽チンな稜線歩きだろうと思

    写真5 前明神沢       っていたがいきなり硬い雪でアイゼンをつけて出直し。さらに斜度が急になりちょっとやらしいトラバースや雪交じりの痩せ尾根(右側はすっぱり切れ落ちていた)まで出てきたのにはびっくり。おいおい話が違うぞ。

尾根が違うか?という話が出てきたところでフィックスロープ出現。これがまた得体の知れないしろもので触る気にはなれない。完全に脱色して乾きたてのコンクリートのような色。まるでそういう色の新品のようだ。その後も急傾斜で固めの雪渓や、重荷に厳しい岩場を通過してやっと五峰台地に着いたときには歩き出してから8時間近くが経過していたが、そこまでの苦労のご褒美のような絶景(写真6、7)だ。

写真6 五峰台地から霞沢岳・乗鞍岳方面  写真7 五峰台地から西穂・奥穂

   写真8 五峰台地            写真9 五峰

全員ヘロヘロでとにかく乾杯。ビールが旨い。

いやぁ今日の部分が核心じゃないの。明日は楽な稜線歩きだよねぇなどと話していたがいやいやこれがまた・・・

5/4(快晴) 明神主峰・奥明神沢・岳沢テントサイト

五峰

雉打ちペーパーが手から放れた途端空高く舞い上がる強風の中テントを畳み、深澤さんを先頭に出発。風も止み五峰への登り、何処でも登れそう(写真9)だがホールドはぐらぐら、足場は浮き石、落石は許されない登攀、やっと五峰頂上に立った。大正池が輝き、霞沢岳、乗鞍、御嶽山が美しい。今度はこっちこそ今日の核心だよなぁと言いながら景色(写真10)を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

写真10 五峰から望む上高地

四峰

少し下って雪渓を懸垂トラバースし縦走路に。50mロープ一本という深澤さんの距離感は測ったようにぴったりでビックリ。

四峰からは三峰から先が良く見える(写真11)。ずいぶんとんがって見えるけど大丈夫かなぁ。

ここまでのことがあるので全員疑い深くなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

  写真11 四峰から望む三、二、一峰

三峰

久しぶりにのんびりしたルートを歩いていくと三峰(写真11)が目の前に迫ってきた。

少し登ると左の巻き道風と右の直登風ルートが現れた。最初は左を試すが踏み跡は急な雪渓の下に消えていたため右を選択。しばらくはV級弱位までの快適な岩場を楽しめた。

途中には懸垂用支点もあり、ルートは間違っていないようだ。

ところが、右は下に氷を隠したいやらしい這松斜面、左は少し登ると行き詰まりそうな岩場になった。さぁどっちだ。

結局右を選んだがこれがなかなか。深澤さんをしてやばかったというセリフが出た。

膝までつかって必死にはい上がるが、さらに三峰頂上直下も真剣勝負。相変わらずそこそこの難度の岩場をたどって行くと山頂左(西)の雪渓にはトラバースの踏み跡があるがすぐそこで途切れている。こいつは直登しかない。

石川が不得意な超痩せ尾根(右側絶壁雪庇付き)をやっとの思いで抜け、山頂に手をかけたところでさっきの踏み跡まで引き返すといわれしばし絶句。

ひぃひぃ言いながら(本当に荒い息をしながら)ようやく戻ったそこは相変わらず急斜面。こんなところでアイゼンつけるの?

下ろしたザックを背負い直すのがこんなに怖かったのは初めてだ。

緊張しながらアイゼンをつけて下降開始。

重荷には厳しい下降のあとは、雪渓というより雪壁に近い硬い急斜面のトラバース。

二峰への途中で三峰を振り返ると確かにこちらへのクライムダウンは難しすぎるようだ。また深澤さんによるとロープを出そうにも支点が無かったとのこと。

どうやらここが本当の核心だったようだ。いやいや楽しませてくれます。

二峰

アイゼンをはずして普通の稜線歩きで二峰到着。

ここからは懸垂下降だ。支点には比較的新しそうなシュリンゲが付いているが肝心のボルトは赤く錆びたリングボルトが二つ。丁寧に降りないとヤバそうだ。

深澤さんを先頭に静かに下降(写真12)。

   写真12 二峰からの下降       写真13 主峰から望む二峰

主峰

コルからは気楽なルートを15分で明神主峰(写真1415)。明神主稜のピークはどこも360度の眺望が楽しめるが、それに加えて目前に迫る穂高の山並みはすごい迫力だ。

二峰を振り返ると迫力満点(写真13 中央の雪上に降りる。右にそれると絶壁)。

   写真14 二峰から望む主峰          写真15 主峰到着

奥明神沢を岳沢へ

一部急な雪渓のトラバースはあるもののそれ以外は普通の稜線歩きで奥明神沢への下降点到着。なんと先行パーティーはクライムダウンしたとか。

確かにできないことはなさそうだが、重荷と疲労を考慮してわれわれは懸垂下降。

ようやく安全地帯に到着だ。さぁ柔らかい雪面を快調に下るぞ。(写真16

ところが腐った雪に足を取られなかなかこれが・・・

やっと岳沢キャンプ場に着くが岳沢ヒュッテは影も形も無い。大雪崩で留守番ごと流出したとのうわさが流れているらしい(帰宅後に調べて見ると実際の小屋はもっと上のよう。また留守番が行方不明とのニュースも流れていない。流出の可能性はあるものの留守番云々はガセの可能性が高いのでは。しかし、あのものすごいデブリを目の前にしては無理もない)。

熊谷さん、石川は疲れが溜まり、深澤さんは膝が駄目、怪物高田さんは元気だが、明日の奥穂南陵はさらなる苦痛となると読み、泣く泣く諦めるとの深澤リーダーの決断で宴会突入。

 

5/5(快晴)下山

花園直前で渋滞の尻尾に触ったようだがそれ以外はほぼ快調。絶妙のタイミングで渋滞から逃れたようだ。

 

 

 

写真16 奥明神沢

 

 

  写真17 名残を惜しむ      写真18 明神岳と今回のメンバー

 

奥穂南稜はあきらめたものの、テントを担いでのバリエーションはなかなか充実していた。

いたるところに意外に厳しい箇所があり、全員ずいぶん怖い思いをしたと思っていたが、高田さんから「昔の山登りはこんなのが当たり前だったんだよ」との言葉出たのには3人唖然。道理で悪いルートに強いわけだ。

 

今回のルートは完全にバリエーションルートです。一日で抜けるのは非常に厳しいため、ある程度の体力と重荷を背負って岩場を通過できる筋力が必須。もちろん積雪期の岩登り経験も必須。

(深澤の山旅会掲示板書き込みを流用して石川記)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行程(着/発)

5/2

19:20

21:00

勤労会館 発

沢渡第一駐車場 着

5/3

7:17

7:40/7:50

8:40

10:00/10:10

11:47/12:30

13:45/14:05

15:00

沢渡第一駐車場

上高地(標高1500m

岳沢(巨大なデブリ)下部右岸

前明神沢下部(標高1900m付近)

稜線(標高2200m付近 アイゼン着)

稜線(標高2400m付近)

五峰台地(標高2600m付近 幕営)

5/4

7:40

8:35/8:50

10:27/10:40

12:00

12:50/13:05

13:20/13:40

14:10

16:30

五峰台地

五峰山頂

四峰山頂

三峰山頂直後

二峰山頂下

一峰山頂

奥明神沢上端

岳沢幕営地(幕営)

5/5

8:06

9:06/9:15

9:50

10:15/10:45

14:45

岳沢幕営地

遊歩道

上高地バス停

沢渡

勤労会館(解散)

さらに、以下を予定していたが、疲労のため途中切り上げ。

5/5 岳沢⇒南稜⇒奥穂高岳⇒ジャンダルム⇒岳沢のコル⇒岳沢BC(テント泊)

天候、時間により吊尾根より岳沢BCに戻る。

5/6 岳沢⇒上高地⇒沢渡⇒熊谷

5/7 予備日

装備 

共同 ロープ(9mm×50m)2本、エスパースマキシムテント(4〜5人用)、テントマット2枚、コッヘル、雪取り用ビニール袋、ガスコンロ、コンロ用板、ガスボンベ(パワープラス210g)6個、、ツェルト×2、スコップ、ペグ(大)、ラジオ、アルファー米(200g10

個人 バイル、ハーケン1本、ハーネス、アイゼン、ヘルメット、シュラフ、マット、カラビナ5つ、シュリンゲ3本、ATC 、ヘッドランプ、その他

交通

花園IC⇔関越⇔藤岡J⇔上信越⇔更埴J⇔松本IC経由。自家用車で往復。約480km