ワスカラン登山を終わって ペルーアンデスワスカラン登山隊04
隊 長 石坂次郎
1カ月にわたるワスカラン登山とアンデスの文化にふれる旅が終わりました。
今回の登山隊としては「ワスカラン南峰の全員登頂」を目標に上げましたが、北峰の6,350m付近が隊としての最高到達点と言う結果になりました。私自身はそれだけの力が無かった、と言って自分を納得させることができるかも知れませんが、隊全体としては力のある人が何人もいたので残念な気持です。
今シーズンのブランカ山郡は近年になく悪天が続いている、と言うのが現地ワラスの登山関係者の情報でした。この情報は日本にいる4月には聞いていました。
現地に行ってみると、それは10年前ワラスの街から見たワスカラン、5年前C1まで登った時と比べて明らかに違っていました。雲に覆われた日が続き、すっきりとした頂上が見える日が極端に少なくなっていました。その雲の中では毎日のように雪が降っていたのです。
もう一つは氷河の後退です。5年前に比べてもその末端はかなり後退していました。そして
それは後退と言う現象だけではなく、上部の氷河にも変化を与えていて以前は雪原だった所が大きくえぐれ地表が現われたり、クレバスが発達したり、6,000 mを越える稜線でも以前に比べ多くのクレバスができていました。
これらの状況を踏まえて、現地ワラスの登山協会はワスカランを含むいくつかの山についてはガイドを同行することを半分義務づけていました。
ワラスのガイド協会の実態はあまり分りませんが、私たちの登山隊もこの方針に従ってガイドを1人つけました。しかし、どう見てもヨーロッパアルプスのようなガイドの制度や国を始めとする行政の後押しがあるとは思えなません。ガイド全体の人数、力量、経験等も分りませんでしたので、ガイドとの意見調整や兼ね合いがむずかしかったことは事実です。
一方、隊員の体調管理はうまくいったと思います。一番問題になる高度順応は国内では富士山の合宿を組み、現地ではワスカランとは違う山域(イシンカ谷)で4日間、5,500 m クラスの山を2座組み成果をあげました。
これらのトレーニングにより、ワスカランでは高度障害に苦しんだ人はいませんでした。
始めに書いたとおり今シーズンは悪天で、南峰はガイド仲間でもまだ誰も頂上に立っていないとのことでした。地球温暖化のせいか分りませんが、氷河の後退やクレバスの発達で技術的にもますます登りにくくなるように感じました。この山域に登山計画のある人は早めに登っておくことをお奨めします。今回は頂上に立てませんでしたがアンデスの魅力は変わるものではありません。隊員の皆さん及びそれぞれの会の皆さん、これからも「アンデス」に行きましょう。
なお、今回の登山隊は4つの山岳会の合同登山隊でした。各会の中ではそれぞれ多くの方から支援をいただいたと思います。改めて御礼申し上げます。また現地ワラスでは谷川さんに一方ならぬお世話になりました。お世話になるのはいつもの事ながら改めて感謝の気持でいっぱいです。ありがとうございました。