貧乏沢二股

独標のトラバース

P11付近の岩峰

P13への登り

北鎌平から見上げる大槍

大槍の登攀

槍ヶ岳山頂

独標から見た「槍 残照」

【 山 名 】 槍ヶ岳
【 山 域 】 北アルプス
【 月 日 】 2003年7月24日(木)〜27日(日)

【 天 候 】 24日 曇り一時晴れ夕刻小雨
       25日 晴れ 午後雨、夕方から晴れ
       26日 快晴 午後から曇り一時雨
       27日 曇り

【 ルート 】沢渡(車デポ)⇒ 中房温泉→燕小屋→貧乏沢→天上沢(泊)→北鎌沢右俣
→北鎌尾根縦走(泊)→槍ヶ岳→横尾(泊)→上高地 ⇒ 沢渡(車回収)⇒中房温泉(車回収)

【メンバー】 篠原(L)、園 (食担)
【 地 図 】 1/25000 槍ヶ岳
【 温 泉 】 中房温泉 有明荘 600円 流しきり 特に内湯がGood

学生時代に読んだ新田次郎の「孤高の人」や松濤明の「風雪のビバーク」で北鎌尾根という存在は知っていた。4年前にハイキングを始めた頃その尾根は別な世界のものだった。やがて西上州の藪岩歩きが高じて山旅会に入り、沢、フリークライミング、ついにはアルパインクライミングまで経験するに至ってふと気が付くと北鎌尾根を強く意識するようになっていた。

梅雨も開けきらぬ7月23日、車窓を打つ雨のなか沢渡に向けて車をひた走らせた。週間予報はぐずつき気味のこの先4日間を告げていた。行ける所まで行ってみよう、篠原さんも同じ気持ちだったのだろう。止めようの一言はなかった。

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24日)

中房温泉6:05→9:02合戦小屋9:20→10:35燕山荘11:10→14:30大天井ヒュッテ15:05→15:25貧乏沢入り口15:30→17:50天上沢→18:05北鎌沢出合い付近(泊)

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翌朝中房温泉の駐車場で目覚めると雨は上がっていた。どうなるか分からないが大天井ヒュッテまでは行ってみようと歩き出すと、幸いにも晴れ間がのぞいてきた。
軽量化を怠ったザックは過剰な食料と快適ビバーク装備で満載となったものの、予定通り午後3時には大天井ヒュッテに到着。

もとより甘くはないとは聞いていた貧乏沢であるが、大きな雪渓が残っていたためアプローチシューズを履いてきた園は大苦戦。かなり怖い思いをした。
ようやく天上沢に無事降り立ったと思いきや、藪漕ぎで絡め取られたのかザックに括り付けてあった半身マットがなくなっていた。
北鎌沢出合いの数分手前でテン泊。酒も飲めないくらい疲れていた二人とはあっさり就寝。

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25日)

北鎌沢出合い付近5:25→(右手の枝沢に入り込みルートミス、懸垂下降2ピッチ)10:10北鎌のコル10:30→11:55天狗の腰掛(P9)→12:55独標トラバース開始→(雨で15分停滞)→13:08残置ロープのチムニー→13:30独標ピーク(雨で泊)

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翌朝遡った北鎌沢右俣は事前に集めた情報とは違って水流豊富な明るい沢登り。枝沢は全て右を辿ると聞いていたが、これに引っかかって3級の岩登りと際どい草付き登攀を強いられた挙句に行き詰まり、懸垂2ピッチと草付きのトラバースで右股へ戻った。2時間と体力のロス。北鎌沢右股で困難なところに出たらルートミスと思ったほうが良い。

北鎌のコルからP8,P9は木の根頼りの藪山登りであるが、ルートは明瞭。独標のトラバースで雨となり、狭いバンドに座ってツェルトをかぶり一時をしのぐ。残置ロープのあるチムニーは左壁が簡単そうだったが、あえてチムニー登攀に挑んだ。しかし雨に濡れたチムニーは意外に手ごわく、一手目で背の重みに引き剥がされて結局A0。こんなことなら素直に左壁を登れば良かった。
チムニー上の小テラスから戻り気味に左上する正規ルートは踏み跡皆無。篠原さんの巧みなルーファンで無事独標ピークに達した。

ここで本降り。まだ1時半ではあるがこの先のビバーク適地を把握していなかった事もあってここでビバークとする。夕刻雨が上がったのでテントから顔を出すと、夕日に赤く輝く槍が大きく聳えていた。

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26日)
独標ピーク5:00→5:40 P11 →6:00 P12・13のコル →6:50 P13 →8:30北鎌平9:00→10:00槍ヶ岳山頂10:30 →10:40肩の小屋11:05 →16:00横尾(泊)

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3日目の朝、快晴。独標からP11の間はいかにも北鎌らしい岩峰の登下降が続くが、朝一番のほぐれていない身体にはちょっとシビア。P12、P13を通過し、だいぶ疲れてきたのでP14手前の岩峰で篠原さんにトラバースを持ちかけた。しかしこれが大間違え、P14,15まとめて北鎌平の直下まで大きく巻いてしまった。巻き道といっても踏み跡は薄く、ザレたバンドのトラバースはいつ行き詰まるかと結構冷や汗ものだった。

北鎌平で大休止。ここまで終始トップでルーファンを続けてくれた篠原さんが、もう疲れたのでトップを代われと言う。最後の美味しいところだけトップなんてできない相談と固辞するが、聞き入れてもらえずありがたくやらせてもらう。

大槍の肩からは2級程度のしっかりした岩登り。赤ペンキに従うだけでルートは明瞭。
登ってみると意外にすぐに下のチムニーに出た。左壁の残置シュリンゲを掴んでA0登攀。
続く上のチムニーは今にも落ちそうなチョックストーンを避けて右壁を登ったが結構細かく、ファイブテンのアプローチシューズが威力を発揮した。

午前10時丁度に槍の山頂へ抜け出た。山頂には数人の登山客がいたが北鎌のことなど知らない様子で、拍手どころか怪訝な顔で迎えられちょっと残念だ。

今日中に下山してどこかの温泉旅館に泊まって浴衣でのんびりしたかったが、時間的にも体力的にも無理そうなので横尾を目指した。ババ平で明日未明に水又乗越からの北鎌ワンデイアッセント?に挑む友人のPさんに遭遇。しばし歓談。
横尾で冷え冷え生ジョッキ、缶ビール、日本酒で縦走の成功を祝い、翌日中房温泉の車を回収し帰路についた。

篠原さん、足掛け5日間本当にお世話になりました。夢が叶いました。
しいて言えば、P14,15を巻いてしまったことが唯一の心残りです。
来年湯俣から誰か一緒に行かない?