03年夏合宿 八つ峰6峰Cフェース登攀、八つ峰縦走、立山縦走

【 山 名 】 剱岳、立山連峰 他
【 山 域 】 北アルプス
【 月 日 】 2003年7月31日(木)〜8月2日(土) (30日前泊)
【 天 候 】 31日 晴れ 夕方ガス
        1日 快晴 午後ガス
        2日 快晴 午後曇り
【 ルート 】 31日 室堂→別山乗越し→剱沢小屋テント場
       1日 バリ組)剱沢小屋テント場→八つ峰6峰Cフェース登攀→
八つ峰縦走→北方稜線縦走→剱岳→剱沢小屋テント場
          村野) 剱沢小屋テント場→(別山尾根)→剱岳ピストン
       2日 剱沢小屋テント場→別山→大汝山→雄山→剱沢小屋テント場
→別山乗越し→室堂
【メンバー】 熊谷、松永、高田、村野、園 (市川さん夫妻)
【 地 図 】 1/25000 剱岳、十字峡

熊谷山旅会4天皇? 超ハイペース、着いていけん! Cフェース取り付き
Cフェース最後のリッジ
Cフェースを上りきる 次はあの剱本峰まで行くのだ 8峰フリーソロの面々 剱山頂にて

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7月31日)
扇沢7:30⇒9:30〜9:45室堂→10:15〜10:30雷鳥沢→11:50〜12:05別山乗越→12:25剱沢小屋テント場

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前夜は大町市内の某所にテントを張って仮眠。翌朝、扇沢へ着くと会の市川さん夫婦が「昨日は遅くまでビール冷やして待ってたのに」と我々を迎えてくれた。夫妻は夏合宿組とは別行動であるが、テン場も日程も我々と一緒である。往復切符を購入し一番のバスで室堂へ。昨年登山客はほとんどいなかったが、今年は約半数を占めていた。

地獄谷への急傾斜の階段が未だ雪に埋もれている。昨年より随分雪が多いようだ。高田さん、村野さんのペースがやけに速く、25〜30kg越えの重荷にもかかわらず、昨年3時間50分かかった室堂から剱沢への行程を今年は2時間40分で着いてしまった。スゴイコトダ。

テント設営後別山の岩場でのクライミングと聞いていたが、唯一岩場の場所を知っている深澤さんが不参加のため、今年も宴会突入。夕方遅れてきた松永さんがテント場内にボルダリングができる大岩を見つけ、皆でしばらく興じた。

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8月1日
剱沢テント場3:05→4:00長次郎雪渓出合い→5:30〜6:20  6峰Cフェース取り付き
→8:20〜8:50 6峰Cフェースの頭 →10:17 8峰ピーク→10:45〜11:00池ノ谷乗越→11:25長次郎の頭?→12:40〜13:10剱岳→15:10剱御前小屋→15:40剱沢小屋テント場
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今日は別山尾根から剱岳を目指す村野さんと八つ峰縦走組に分かれての行動。何年か前Cフェース取付きで何時間も順番待ちをさせられたという熊谷さん、松永さんの経験から深夜2時起床、3時に出発。

長次郎雪渓の中ほどで夜明け。白い雪渓の上に朝日を受けてまっ赤に輝く源次郎尾根と、左右の尾根から聞いたこともない鳥たちの一斉の囀りが始まる感動の一瞬を迎えた。
今日も相変わらずのハイペース。昨年4時間20分かかった6峰基部まで、熊谷・高田で2時間強、一番遅かった私ですら2時間半弱で取付きに着いてしまった。

後で分かったことであるが、この日矢板山岳会のUさんらがチンネ左稜線を登っていたとのこと。熊の岩から出発したパーティーがそうだったのかな?

ここまで休まず来たので、休憩を兼ねてのんびりと登攀の準備。先に着いた熊谷さんと高田さんがザイルを組み、松永さんと園が続くことにした。往年の谷川岳開拓者、高田さんは先週コップ状岩壁の初登攀を競いあった緑山岳会と雲表山岳会のクライマーと3人合わせて204才トリオで谷川岳南稜を登ってきたとか。すごいなぁ。

第一ピッチ、園リード。先行パーティーの高田さんの登りが速く、あっという間に視界から消えて行った。
斜度の低いフェースで支点も多く何の問題もないが、剱でのアルパインのリードというだけで緊張が高まった。松永さんの確保にはルベルソを初めて使ったが、なかなか使い勝手がよい。

2ピッチ目は松永さんリード。その松永さんが2手登ってからルベルソをセカンド用にセットしていることに気づいた。あわてて声をかけATCに付け替えたが、松永さんには悪いことをした。ゴメンね。
岩場自体はセカンドで登ったせいか余り記憶がないが、いずれにしても易しかった。

3ピッチ目は私のリードの順番であるが、松永さんの「やりましょうか?」の言葉でリードをお願いする。松永さんのビレー中にイワツバメの威嚇を受け、びっくり。頭上間近をブーンという想像もできない大きなうなり音と共に飛び去った。
眼下の長次郎雪渓には3パーティーほどが登って来ているところだった。

4ピッチ目も相変わらずのフェース登攀。園リードで登るがピッチ後半で支点が見つからず、フレンズを持っていたにもかかわらず15mか20mのランアウト。しっかり支点を作らなければならないと後で反省。また、ルベルソを低い位置にセットしてしまったので松永さんの登りのスピードに合わせられず、これも反省。

5ピッチ目は有名なナイフリッジのトラバース。松永さんが「すごい高度感だ」との声を残して視界から消えていった。手が切れそうなナイフリッジとはこういうのを言うのかという鋭いナイフリッジをトップはどう越えていったのだろうか?鋭い頂稜を掴んでオポジションでトラバースする勇気もなく、頂稜を尻に挟んでズルズルと通過した。

8時20分無事登攀終了。

ルートグレード2級、最高ピッチグレード3級というグレーディング以上のすっきりした登攀が楽しめました。

さて、これからがメインディッシュの八つ峰縦走である。Cフェースの頭から踏み跡を辿って昨年登攀したDフェースの頭を通過し、6峰の北端のピークから最初の懸垂下降。小ピークを含めて全て稜線伝いに行くという松永さんの先導だったので7峰もピークを踏んだが、状況は忘れてしまった。7峰からの懸垂中に見た8峰の登りはクライミングの世界。松永さん、高田さんは何でもないぜとロープなしで登ろうとしている。
こんな高さのフリーソロなんて厭だよ〜と高田さんに頼んでロープを延ばして登ってもらった。結果的にはせいぜい2級くらいだったが、50mロープいっぱいで足りない高さだったし、岩はもろいしで大槍の登りよりよほど怖いと思った。こんな登攀を平気でプラブーツ・無確保でやってしまう松永さんに驚嘆。クレオパトラニードルやチンネ左稜線を眺めながら8峰を懸垂下降し、八つ峰の頭はパスして池ノ谷乗越へ降り立ち八つ峰縦走は終了。

ここから剱岳までは北方稜線の縦走になる。
池ノ谷乗越から池ノ谷尾根の頭への登攀は通常中央のガリーを40mほど登るらしいが、ガリー内はもろそうに見えたので右手のフェースを登った。これも結構スリリング。更に先で小ピークの下部5mほどにまき道があるにもかかわらず、ピークにこだわって4級下の登りに挑んだ松永さんが掴んだ岩が抜け1mほど滑落しかけてヒヤッとする。

長次郎の頭もピークを踏んだ積りでいるが、このころはガスの中で視界が利かなくなっていたので確信は持てない。
目前の大きな峰が本峰か長次郎の頭か意見が割れる中、頂上に人影が見えた。
山頂には一般道からの登山客が数人と、長次郎雪渓を源頭まで詰めてから北方稜線を縦走してきた方がいて互いに写真を撮りあった。

剱沢までの別山尾根の下山は相変わらず長かった。
テント場への最後の登り返しを10m登っては立ち止まって肩で息をしていると、先ほどから小屋のテラスで大騒ぎをしている酔っ払い達から
「大将〜!立ち止まるんじゃあねぇ!歩けー」とのからかいと周囲の大笑いが何度も響いた。むかっ腹が立って仕方なかったが、相手にするのも大人げないかと放かしておいた。
宴会はその後も延々と続き、事故は起こった。

皆が一斉にテラスのほうを見ているので何事かと思っていると、どうやら酔っ払いの一人が3mほどのテラスから転落したらしい。天罰だ、ヘリ代50万円のいい勉強だ、と悪たれを吐いていると、頚椎をどうにかしてしまったらしく体が全く動かないとのこと。そうとも知らず悪たれなど吐いて申し訳なかった。ヘリでの搬送までに2時間近くを要したように思う。