【 山 名 】北岳(bガリー、第四尾根)
【 日 時 】2002年8月31日(土)〜9月1日(日)
【 ルート 】31日)広河原ヒュッテ前13:05→15:30白根御池
      1日)白根御池4:00→6:00bガリー大滝6:30→12:00第4尾根終了点12:30→13:05北岳山頂13:15→
        14:30白根御池15:15→17:00広河原ヒュッテ前
【登攀パーティー】松永さん、篠原さん、園
【 地 図 】 1/25000地形図
【ガイドブック】Rock&Snow Books アルパインクライミング他

8月31日 晴れ後ガス

正午丁度に満車状態の広河原に到着。一番奥のヒュッテ前の路肩になんとかスペースを見つけ駐車する。剣合宿の帰路に船戸さんと盛り
上って計画した今回のバットレス登攀であるが、蓋を明けてみれば9名の大所帯となった。熊谷登攀クラブだったけか?
遊歩道は広河原山荘の脇から登山道に変り、少し歩くと苦しい急登が始まる。先週のヒツゴー沢での17時間の彷徨による疲れが未だ残
っているとは考えたくないが、妙に腿が重い気がしてペースが上がらない。
深沢、高田の超人コンビがすぐに視界から消え去ってしまったのはいつものことであるが、しばらく山を離れていたという篠原さんや
重荷の熊谷さんにも置いて行かれてしまう。ありゃ、困ったなぁ、今日のテン場はどこだったんだっけ。「私の行く先はどこですか?」
って聞かれたっていう笑い話は本当にあるんだ。

何とかがんばって登り続けていると思ったよりも早く急登が終わり、トラバース道に出た。小屋まで30分という標識が目に入る。
これでは皆休憩無しで行ってしまったのだろうと諦めたのだが、意外にも水場で待っていてくれた。水場からは10分で白根御池小屋着。
広河原の駐車場の混み具合からは信じられないくらいテントサイトは空いていた。
テント設営が終わってしばらくすると、遅れて歩いていた船戸さん、真弓ちゃん、石川さんも元気に到着。
早速宴会に突入するが、9人もいると1.5升の酒もあっという間になくなり8時には就寝。

9月1日 快晴

3時起床。準備をしている内にも何組かが出発していった。まだ真っ暗な中、4時に出発。二又を過ぎC沢の辺りで素晴らしい
ご来光を迎える。朝日の逆光に鳳凰三山のシルエットが浮かび上がり、頭上のバットレスが赤く輝やいた。素晴らしい天気だ。

バットレス下部にて
C沢の水場で休憩した後、ピラミッドフェースに向かう深沢さん、高田さん、船戸さんと別れ、下部岩壁の基部を
bガリーへ回りこむ。bガリー大滝にはすでにパーティーが取付いていて更に数人が待っている。聞けば3時に
出発してきたのだが、上にはもう10人以上が取付いていると言う。さすが人気ルートだ。
順番待ちの間に、松永さんが篠原さん・園と組み、熊谷さんが石川さん・真弓ちゃんと組むことになった。
確保不要かと思われるくらい簡単な最初の20mのクラックルートを越え、第2,3ピッチは松永さんが一気に
ロープを伸ばし、下部岩壁はあっけなく終了。這い松の緩傾斜帯を左へトラバースして第4尾根の取付きへ向かうが、
何故かルートを間違えてCガリーを挟んだ右手の尾根を、第4尾根の取付きより高い位置まで詰めてしまった。
しかたなく古い懸垂支点を使ってCガリーへ下降し、赤ペンキで4と書かれた取付きへトラバースする。
後に分かったことであるが、この時取付きを登っていた二人は猫の森のKガイドさんとお客さんのRさんだったとのこと。
この埃っぽいフェースを登ると10人くらいは座れるテラスがあり。ここが4尾根の取付きとのこと。休んでいた東大の
山の会OBパーティーに先を譲ってもらう。

OBパーティーによれば1ピッチ目はフットジャムを使う正面ルートと、右手を登るルートとがあり、正面ルートの方が
やや難しいという。もちろんMさんは正面ルートを選択。
私も続くがジャムを効かせた足が痛い事。ここから先のピッチは緩傾斜のリッジ、フェースの連続だったような気がする。
3ピッチ目白い岩の登攀

このルートの核心はまるでボルダ-のようなV級の大岩である。ただし支点は豊富で、落ちても3mほど下のテラスまでで
怖いことはない。てな生意気なことを口走ると松永さんが「ならリードしますか?」…赤面、遠慮、固辞。
松永さんはギャラリーから声がかかるほど華麗なムーブで越えていったが、当然私はヌンチャクを掴んでのA0である。

高度感あるマッチ箱からは大きな富士山が素晴らしい眺めだ。正面には地蔵岳のオベリスクもはっきり見えている。
この時落石というより岩雪崩の大音響が…。後続のOBグループが大声で「ラクーッ、ラク、ラク、ラクーッ!!」と叫び、
下からは大きな悲鳴が聞こえてきた。高度感でマッチ箱にしがみついて動けない私には下の様子が分からないが、大きな事故
にはならなかったようだ。でも下の皆がどうまったのかすごく心配。

ここで一旦Dガリー奥壁側へ懸垂下降となるが登山道から良く見えるので、こちらに気付いた登山者が歓声を上げてくれて
ちょっといい気分である。(さっきの心配はどうした?)ツルツルのスラブの右端に僅かなホールドを拾って登り返す。
枯れ木のテラスからは最初の一手が見つからず一瞬戸惑ったが、右手の高い位置にガバが見つかれば簡単そのもの。

最終ピッチ(II)はロープを解いて登り、12時ジャストに終了点の大テラスに到着。松永さん篠原さんと固い握手を交わす。
マッチ箱で追いついてきたピラミッドフェースパーティーもすぐに姿を現した。
疲れきった太腿に鞭打ち、お花畑を抜けて登山者で賑わう北岳山頂へ。初剣岳と同じく初北岳もアルパインでの登頂になった。
我ながらすごいなぁ。皆さんに感謝です。

今夜の泊まりも視野に入れてゆっくりペースで行動している熊谷さんパーティーを念の為に山頂で待つという松永さんに別れを告げて
白根御池へ降りる。熊谷さん達の苦闘も知らず小屋で買ったビールの旨かったこと。最高〜!!(知らぬ事とは言えゴメンナサイ)
篠原さんもテントで熊谷さん達を待つという。

何としても22時までには自宅に帰りたいという深沢さんに急かされ足早に広河原へ降りるが、疲れた私と船戸さんは休み無しに
歩き続けることができず、超人二人に遅れること45分の17時丁度に広河原ヒュッテ前に到着した。

熊谷到着の寸前に真理さんから掛かってきた電話に一同騒然。大丈夫とは思っていても眠れぬ夜を過ごした翌朝、熊谷さんからの
無事の電話に思わず涙が出ました。