ゲリラ実験室
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| MISSION_005 | 180SXでプリウスに挑む! 600km無給油で走行せよ! |
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「ムリだよ、今回は。」
いつになく自信のないドクターうるふである。
「プリウス相手に燃費対決なんて。ハッキリ言ってかなわないよ」
ゲリラボ実験内容の検討会議での発言。どんな不利な勝負でも常に自信のある姿を見せつづけたうるふであったが、さすがに今回は乗り気ではない。
「いいじゃん。それなりの結果が出れば。こっちはスポーツカー、向こうは燃費だけの車じゃん。その辺は加味して結果を受け止めてもらえるよ」
と冷静なゆみごん社長。この人物、他人事にはいやにクールな分析を見せる。
「オレはその”それなりの結果”って言うのが嫌なんだよ!」ドクターうるふは席を立ってしまった。長期実験中の項目に差し替えも考えたが、まだ、完全な結果を得られておらず、発表の段階ではない。今回はとにかく燃費対決で行くしかないのである。
「ちょっとぉ。結果がどうでも実験はするって「ゲリラボとは」にも書いたでしょ!」
今回は、ドクターうるふの説得から開始せねばならないようだ。
ドクターうるふは考えていた。
スポーツカーは根本的に燃費が悪いものだ。パワーを出すために、シリンダー内にどれだけ多くの燃料と空気を入れられるかが勝負の車である。それでも180SXの燃費は通常走行で9。パワーと燃費を両立した、すばらしいラインであると思う。ただ、最近出てきた20km/lを超えるような車と張り合うというのは畑違いもいいところだ。技術の差がもろに出てしまう部分で、最新の車との勝負など、成立するのか……。
今までの燃費の最高が12.021km。金沢から深夜のノンストップ走行でたたき出した、たった1度の値だ。たとえば奇跡的にもう一度これが出たとして、
180SXで燃費12km/l。
なんて結果でいいのか。こんなんで燃費20kmを超えるプリウスと戦ったことになるのか。なるわけがない。だいたい35kmも走るインサイトなんてのも出てきやがった。いまどき、リッター12kmなんて誰も驚きはしまい。「今さら何言ってんだ、コイツ」となるのがオチである。
それがドクターうるふには耐えられなかった。
翌日。一人になって考え、気分も落ち着いたのか、ドクターうるふも話し合いの席に再びついた。
「見てよ。あの後ちょっと調べてみたんだけど……。」ゆみごん社長が提示したのはプリウスが北米大陸を横断したときのものである。この車は1999年の東京モーターショーにも展示されていた。トータルの燃費は16.8km。20km台ではない。
「更にさ……。」まだ、あるようである。
「プリウスオーナーのページを見つけたんだけど……。」ゆみごん社長の愛機、VAIO737の画面にはオフラインでWebページが表示された。すでに旧型のVAIOだが、買い換えるつもりはないと言い張っている。「12kmくらいの場合もあるんだよね。14,15レベルはざら。そのページによると初期不良も出てるらしいし、やっぱり、20以上って言うのはプリウスといえどもある程度気を使わないと出ない数字みたいだよ。やってみようよ」
ドクターうるふの沈黙は続く。じっと見守るゆみごん社長。少しして、ドクターうるふは立ち上がった。
「慣熟走行が必要だ。実験開始はもう少し待ってくれ」
こう言って部屋を出た。
慣熟走行
2月12日から13日にかけて、千葉県は館山までドクターうるふは旅行へ行ってきた。これはゲリラボのための慣熟走行をかねている。
宿泊を伴うため、装備は重い。宿泊の装備についてはうるふホームページの「マイホーム180SX」に詳しいが、掛け布団3枚、寝袋2枚、自炊道具、水4リットルなどを搭載している。更に、体重??kgのピパ子氏も同乗している。条件的には決して良いとは言えない。
自宅付近のスタンドでタンクを満タンにする。帰宅後、再び満タンにして、入った量と走行距離で燃費を割り出す。
燃費の良い走行がどのようなものかを探り出すことが今回の最大の目的である。参考にするのはブースト計。吸気圧が低ければそれだけ燃料も食っていないと判断する。本番は同乗者はいない。全て実験者であるドクターうるふが、記録、運転もこなす。できるだけ、単純な判断方法がストレスにならずに済む。
ここでそのあたりについても少し突っ込んで説明しておきたい。左の写真がブースト計で赤い針が半分(黄色線。「0」と記されている)より下であれば負圧、黄色線より上(↑方向)まで針が行くと過吸している(ターボがかかっている)状態を表す。つまり、針が上に行くほど、エンジン内に大量の空気が送り込まれていると考えることができるのである。
今回はエンジン内に大量の空気が送り込まれると言うことはそれに伴って多くの燃料使用する、と単純に考えた。そして暫定的に写真で針がさしている状態、300mm/Hgを最高値として走行することを目標にする。で、走行である。やはり発進は燃料を多く消費する。急加速も同様だ。ちょっと気を抜けば、すぐに0mm/Hgになってしまう。それだけに、走行中に何度となく繰り返され、かつ燃料消費が多い発進の作業に気を配れば、大幅な燃費向上が見られるのではないかと期待が高まる。
上手くなってくると、300mm/Hgキープで発進することもできるようになる。その後の走行も300mm/Hg程度で可能だ。30kmほど走行すると後続車にそれほど迷惑をかけずに燃費走行ができるまでに熟達した。早く結果が知りたくなる。
しかし、うまいことばかりではなかった。
渋滞。
これである。越谷あたりから絶望的になってきた。アイドリングストップを試みるが、50m走行するのに3度も実施できた。渋滞は延々と続いており無意味だと判明する。このままではバッテリーの方がネをあげてしまう。
東京を過ぎても市川、千葉、市原、富津、進むにつれ渋滞はひどくなる。「一足早い春を」なんてシャレこんだのがマズかった。この時期の房総半島は超人気スポットらしい。走っては停まり、停まっては走るを繰り返す。しかし、ドクターうるふは全ての発進に対して細心の注意を払っている。ところが……
「燃費悪いな、こりゃ。」
1目盛り下がった時点でまだ70km程度しか走行していない。1目盛りで100km走行していれば4目盛りで400km。ちょうどリッター8km程度である。
Navin'youと道路地図を駆使し、少しでも距離を稼ぐため、裏道を探す。たとえ遠くなっても走行距離が出る道を選ぶことにしたのだ。その方が燃費の数字自体は良くなる。
日没と共に東京へ向かう車線の渋滞がひどくなり、こっちは緩和されてきた。やっとまともに走れるようになったのは午後6時くらいからだった。房総フラワーラインは先程の渋滞がウソのようなガラガラ状態。少しでも花が見れればと思ったが、道端の菜の花だけがヘッドライトで薄暗く照らし出されるだけだった。
その日は道の駅「きょなん」で車内泊し、翌日は周辺で釣りを楽しんだ後、帰宅。この日は前日とは違い道は良く流れていた。昨日までボアリングな走行中でもひたすら燃費走行の練習に励んだせいか、徐々に成績が良くなっていく。2目盛り半を過ぎた段階で走行距離は270km。回復してきたか。
今までは通常走行時、うるさいのでシフトチェンジを2500回転で行っていた。燃費の面でも回転は上げないほうがいいと思っていたのだが、そうではなく、3000回転くらいまで引っ張ったほうが吸気圧を上げずに走行できる。これは新しい発見だった。巡航走行に入っても、5速2000回転より、4速2500回転の方が吸気圧が低くて済む。また、100km/hを超えるような走行になると、速度を維持するだけで高い吸気圧になってしまう。このくらいになると、空気抵抗も大きくなってくるのだろう。どんなでも80km/h以上は非効率的のようだ。
2日間、最後までアクセル開度は最高でも20%程度に抑えたはずだ。過吸は一度たりとも行っていない。そして、待望の燃費は……
10.5478km/l
まあ、いい方、と言う程度のものだった。しかし、これをどう見るかが問題である。車重、道路状況、いずれも悪条件の中、この結果ならと期待するか、いくらがんばっても、結局この程度と見るか。
ドクターうるふは、前者であった。
「結構いけるかもしれない。16は厳しいけど、頑張れば13くらい。プリウスに勝てなくてもいい。180SX究極の燃費と言うフロンティアをオレは見たいんだ。」
ドクターうるふの戦いは始まった!
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