第九課 労働組合の闘争形態
1 闘争形態についての考え方
2 ストライキ
第九課 労働組合の闘争形態
1 闘争形態についての考え方
固定した形態はない 闘争形態について第一に知っておくべきことは、闘争には固定した形態はな
いということである。労働組合の闘争形態は、そのときの客観情勢と主体的
条件にあわせて、またその歴史的な発展段階に応じて、労働者と労働組合が
創造的につくり出すものである。幹部が一人で頭のなかでつくり出すものではなく、幹部、
活動家、組合員が、労働組合がおかれている歴史的な段階のもとで、政治的・経済的な、企
業内外の情勢の討議にもとづいてきめるべきものである。情勢はつねに動いているのだから
同じ闘争形態を二度、三度繰りかえしても成功するはずはない。過去の経験を繰りかえした
り、公式を機械的に適用したりするだけでは適切な闘争形態はとれない。闘争形態はまねる
ものではなく、つくり出すものである。
大切なことは「大衆に依拠した闘争形態」という心構えである。大衆と離れた理論や方針
は、画に描いた餅であって、実践とは無縁のものである。大衆の創意性に信頼して、組合員
一人一人の発言を基礎にして、闘争形態を選び、組みたて、大衆の自発性を尊重する運動を
展開することである。
相手方に打撃を与える 闘争形態の選択にあたって、重要なことは「相手方にできるだけ大きな打撃
をあたえる」ということである。全面ストライキを連続してうつべきか、断
続・反復してうつべきかなどの決定は、それがどれだけ経営の生産と販売に
打撃をあたえ、味方の団結を強めることができるかによってきまる。この場合、味方の犠牲
が少ないほどよいことは、わかりきったことであるが、だからといって、自分が闘わないで
他人の闘争にぶらさがって利益を得ようと考えたり、味方が犠牲をこうむることをおそれた
りしてはならない。こちらに大きな負担があっても、それ以上に資本に大きな打撃をあたえ
るならば、一時的な負担をおそれる必要はない。
また闘争形態の効果は、その直接的な効果とともに、そこに発揮された労働者の団結の強
さが、つぎのさらに強烈な闘争形態へと発展し、闘争が拡大することのなかにある。
闘争の中で意識と組織を強める
労働組合の闘争は「闘いつつ、労働者の意識と組織を強めていく」こと
が前提である。軍隊と労働組合の闘争の相違は、軍隊の場合には闘争の
まえに訓練と装備があたえられ、既存の戦力が確立しているのだが、労
働組合の場合は、日常的に資本家の攻撃にさらされているために、十分な財政的、組織的、
意識的な準備がととのっていないまま、闘争に立上がることを余儀なくされることがある。
労働者は闘いをつうじて、闘いの経験と闘いのなかでの数育によって、戦闘力をつよめてい
く。だから労働組合では、全ての労働者が一諸に情勢を検討し、ともに戦術決定の討論に参
加し、みずからを鍛え、ひとをも鍛えていかなければならない。闘争形態は、労働者が戦闘
性を闘いのなかで身につけ、組織を強化していく方向で決められなければならない。
日常からの闘争力の強化 このことから、日常から組織の闘争力を強化するため、系統的に
準備をしておく必要も明らかとなる。一般に労働組合の闘争力は、次の要素によって決まる。
第一に労働組合がその産業あるいは企業の労働者を組織している度合い、第二に組合員の闘
争経験や階級的自覚の高さ、日常的な教宣などを通じての情勢認識の程度、第三に組合員相
互の信頼と団結および組合指導部への支持の高さ、第五に要求と闘いのすすめ方についての
意思統一の強さ、第五に組合財政・闘争資金の確立と充実の程度、第六に地域別・産業別・
全国的な共闘体制の状況。
展望をもつこと 闘争が大衆的に効果的になるためには「闘いの展望の大すじを、いつもあきら
かにしておくこと」が大切である。労働者が自信をもって闘いをつづけるのは、
展望が明らかな場合である。このことは、一部の組合員からよくでるように、
「幹部は絶対間違いなく要求が全額とれるという自信があるのか」という類のものではなく、
たたかいの大すじを明らかにすることである。労働組合の闘争の成否は、企業内外のさまざ
まな条件によって左右される。労働者側の力量は、闘いを通じてよく指導されれば成長し、
指導を誤ればもてる力量すら十分に発揮されないでおわる。あらかじめきまった持駒で勝負
するわけではないから、易者のような予見をいうことは間違いである。
しかし、闘争の基本的性格、相互の力関係、戦術の基本的な配置を明らかにして、労働者
が目的にいたる道筋=展望を与えることは、労働者のもっている潜在的な力量を十分に発揮
させるために必要である。
真の成果は団結の拡大 「労働者はときどき勝利を得るが、それはほんの一時にすぎない。彼らの闘
争の真の成果は、直接的な結果にはなく、労働者の団結がますます拡大する
ことにある」(マルクス・エンゲルス)ことを知らなければならない。労働者は
闘えば必ず勝つとはかぎらないが、労働者は闘いをつうじて資本主義の仕組みを知り、団結
を強め拡大していくようになる。労働組合の闘争は、一般的にいって一〇〇かゼロかのいず
れかの道を選ばなければならないものではない。「ときとして完全な勝利」を得ることがあ
っても、いつでもそうであると考えるわけにはいかない。「団結がますます拡大し強化され
る」という目安をもって妥協することが決して少なくない。
二種類の妥協 闘争に立上った労働者は、何一つ成果をあげないで、あるいはきわめて不十
分にしか要求が満たされないままで、闘争をやめて作業にかからなければならないような、
資本家との妥協を経験している。このように余儀なくされた妥協には、二つの種類がある。
一つは、労働者がひきつづき闘争する決意を固めながら、闘争をおさめて陣列を再整備する
ための妥協である。もう一つは、資本家のおどかしに屈し、甘言にまどわされた一部指導者
による裏切り的な妥協である。
妥協の本当の性質を正しくとらえることは容易ではない。しかし大切なことは、闘争を余
儀なくおさめる場合、必ず忍耐づよい大衆討議を繰りかえし行い、組合員みずからが結論を
ひき出すように指導することである。同時に、こうした討議のなかから、組合員一人一人が、
自ら次の闘いにそなえて決意を固め、組織の欠陥と力量の不足を反省し、組織強化について
の方向を理解するよう努めることが大切である。
2 ストライキ
ストライキの意義
ストライキは基本的武器 ストライキは、この社会制度に対する労働者の組織的
な闘いの始まりを意味するものであった。もともと労働組合組織というもの
は、労働者の自然発生的なストライキから生れたものであった。個人的な抵抗
や一揆的な暴動という段階から、労働者は自分たちの要求が認められないかぎり、集団で就
労を拒否するという、より進んだ組織的な闘争形態をとり始めた。これがストライキである
が、はじめは問題が起こるたびに一時的に結束してストライキを打ち、解決すればまたもと
の分散状態に戻ることを繰り返した。こうした経験を通じて労働者はいつでもストライキと
いう武器を行使できるように、恒常的に団結する組織=労働組合を作ったのである。だから、
ストライキは、労働組合の団結の基本的武器なのである。
自覚と団結の前進 ストライキの意義は就労を拒否することによって、単に経営に経済的打
撃を与えるというだけのものではない。「君の力強い腕が欲するなら、いっさいの車輪はと
まるだろう」とドイツの古い労働歌はうたっているが、実際、工場、機械、鉄道等々はすべ
て一つの巨大な機械装置のようなものであって、これを動かしているのは労働者である。労
働者が働くことを拒絶すれば、この機械装置全体が止まってしまう。
こうして、どのストライキも、本当の主人公は資本家ではなく、ますます声高く自分の権
利を主張している労働者である、ということを資本家に思いださせる。どのストライキも、
自分たちの状態は絶望的ではなく、ひとりぼっちではないことを労働者に思い出させる。一
つの工場のストライキは、しばしば急速に他の一連の工場で同様のストライキを引き起すが、
それは一時的にもせよ資本のいいなりになることを拒否し、資本家と対等な権利をもった人
間となっている仲間の姿が、労働者に強い伝播力を発揮するからである。また、日ごろ兢争
し合っている資本家階級も、労働者のストライキには共同して襲いかかるが、そのなかで労
働者は自分の身近な仲間のことだけを考えるのではなく、資本家階級全体と労働者階級全体
のことを考えることを学ぶのである。
ストライキはまた、資本家に対して労働者の目を開かせるだけでなく、政府に対し法律に
対しても目を開かせる。警察は善良な市民の味方であり、法律は自分たちを守ってくれるも
のだと考えている労働者は多い。しかしピケットに干渉し、ストライキを弾圧する警察権力
にぶつかり、自分たちの正当な行動が「法律」の名によって圧迫されるのを知って、政府や
法律、警察などの権力が、中立・公平なものでなく、資本家階級の利益を守るものだという
ことを理解するようになる。
この意味で、ストライキは「階級的労働運動の学枚」とよばれるのである。
ストライキ闘争の発展 資本主義の発展とともに、資本家が労働者の運動を押えつける方法も複雑、
巧妙なものになり、また労働者の運動の発展、大衆的自覚の成長によって、
ますます多種・多様な闘争形態がストライキを軸にあみだされている。経済
的、政治的情勢の変化や発展、危機の激化などから、労働者と労働組合はたえず新しい多様
な防衝と攻撃の方法、形態を発展させている。
経済の不況や恐慌の時期には、資本家はわざと挑発的な行動にでたり、大がかりなウソの
宣伝で、労働者の闘いを孤立させようとしてくる。労働組合のなかにも、不況のときにはス
トライキはあまり効果がない、というような考え方がある。これらはストライキが与える経
済的打撃しかみない、狭い誤った考え方である。大切なことは、労働者の鼓本的武器である
ストライキと大衆行動とを結びつけ、ストライキにはいった労働者が、大衆的なデモや決起
集会、抗議行動、労働者の自覚を高める宣伝・学習、勤労国民へのアピールなどを行い、議
会や自治体、経営者団体に対する交渉等々の大衆行動を発展させることである。情勢の変化
に適応して、労働者の意識をたかめ、闘争の規模と力をたえず拡大しつつ、資本側を追いつ
める闘争が必要なのである。
経営者のロックアウト ロックアウトは労働者のストライキ権のように、法律的にも是認さ
れた闘争方法ではなく、資本家の力による争議戦術である。経営者は労働者のストライキ闘
争が強まるのに対抗して、ロックアウトを行ってくることがあるが、これにより労働者の闘
争を敗北させることはできず、かえって闘争を激化させる結果を招くことが多い。ロックア
ウトに対しては不意打ちをうけて組合員が動揺しないよう準備し、夜間も工場内に泊り込む
など、ロックアウトを封じる対策をたてることが必要である。またロックアウトが行われた
場合には、逆ロックアウ卜にでて強行就労し工場を占拠することもあれば、ストライキをや
め他の闘争形態を採用することもある。それは、その場合の具体的な情勢から決定される。
経営者は労働者を工場からしめ出すために、裁判所に訴えたり、警察や暴力団まで動員した
りしてくるが、労働者はこのような闘争の経験を通して、資本主義社会の労働者に対する非
道なやりくちを、よりよく知り、ますます信念を固めてゆく。
政治的大衆的ストライキ 国家独占資本主義(帝国主義)のもとでは、巨大な機構と予算をもつよう
になった国家が、独占の利益にそって、国の経済と政治を行い、労資間の
問題に介入するなど、反動的性格をあらわにしてくる。だから前にもふれ
たように、労働組合の経済闘争が政治的性格をおびてくるし、経済闘争と政治闘争がからま
り合って発展する条件がいちじるしく強まってくる。こうした国家独占資本の一般的条件と
政治危機(そこでは支配層が従来のやり方で統治をつづけることが困薙になり、人民の憤激が高まって
次々に行動に決起するようになる)とが結びつくと政治的な性格をもった大ストライキが高揚す
る。
このようなストライキを政治的大衆的ストライキというが、ロシアの場合はこうしたスト
ライキが一八九九年から始まり、一九〇五年には頂点に達した。ついて一九一二〜一四年、
一五〜一七年にもそうした高揚があり、労働者・農民・兵士の革命闘争と結びついて一九一
七年の社会主義革命の勝利をもたらしたのである。このロシア革命に刺激されて、資本主義
が高度に発達した西欧諸国でも、第一次大戦直後にそうした性格のストライキ闘争がみられ
たし、また一九三四〜三六年のフランスで、ファシズムヘの移行か人民戦線かをめぐって国
民的規模の闘いが行われたときに、同じことが起った。
今日の諸条件 戦後の資本主義世界は、六〇年代の終りごろから深刻な経済的困難にぶつ
かり、現在では、いずれの資本主義国でもインフレと不況の同時的進行を特徴とする経済危
機が進行している。この経済危機は、戦後資本主義の高蓄積を支えた二つの条件、すなわち
アメリカのドルを中軸とする国際通貨体制、およぴ帝国主義的支配による中東の石油など資
源・エネルギーの安価な利用という条件がくずれたことと、過剰生産恐慌が結びついたもの
である。資本主義諸国では、この危機から脱出するために、独占の集中支配を一層強化し、
労働者階級、農民、勤労市民および非独占の中小企業に犠牲を転嫁する政策がとられ、独占
の海外進出と多国籍企業化、民主主義の破壊とファシズムヘの傾斜が強まっている。
そのため資本主義諸国では、どこでも、共通に、労働者のストライキ闘争および勤労国民
の反独占、民主主義擁護の闘いが高揚している。一九六八年五〜六月におけるフランス、一
九六九年後半のイタリアの「暑い秋」の大ゼネストは、こうした条件のものでおこった今B
の政治的大衆的ストライキ闘争であり、両国では七〇年代にはいっても前述の矛盾と危機の
性格が一層あらわになるなかで、政治危機が発展している。現在イタリアでは中道政権が不
断の政治危機にさらされており、フランスの今日の危機は、国家独占資本主義がもはやその
「調整機能」を失った結果であることが指摘されている。
統一戦線 イタリアにおける三大労組の階級的組織統一の進行、フランスにおける共同綱
領にもとづく統一戦線の形成にみられるとおり、今日では、労働者階級の政治的大衆的スト
ライキは、統一した労働者階級を中心に、そのまわりに民主的諸勢力を結集した統一戦線と
結びついていることが特徴である。ここには、今日の諸条件のもとでの闘争の発展方向が示
されている。だとするならば、こうした闘争の発展にそなえ、またこれを促進するために、
労働組合の階級的強化と階級的立場にたっての労働組合戦線の統一のために努力しつつ、政
治革新のための統一戦線をめざして努力することが、階級的自覚をもった労働組合活動家の
重要な任務だといえるだろう。なぜなら統一戦線を基礎とした民主的諸党の連合政権のもと
でのみ、労働組合の諸要求も飛躍的に前進し、獲得した成果も安定したものとなるからであ
る。
【設 問」
1 闘争の方針を決定し、総括をするとき、一番大切なことはなんだろうか。
2 闘いの展望とは、どういうことをいうのだろうか。
3 不況のときはストライキは効果がない、という考え方はなぜ正しくないか。
4 ストライキの力を本当に発揮するためには、どんな点に注意したらよいか。
5 強い闘争力のある組合とは、どんな組合のことだろうか。
目次 学習のはじめに
第一課
第二課
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第八課
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むすび
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