第八課 労働組合の要求と行動
1 労働組合の要求
2 要求行動の発展のために
3 経営における組合組織の活動
4 行動の統一
第八課 労働組合の要求と行動
1 労働組合の要求
不満と要求
労働組合は、労働者の不平・不満を取りあげ、これを出発点として要求を組織し、
要求を解決するために行動する組織である。労働者がもっている不平・不満はさ
まざまである。労働者は生活のうえでの、労働する条件についての、あるいは社
会や政治についての、きわめて多くの不平・不満をもっている。
ところで、労働者の不平・不満の種類はさまざまであるとともに、それを解決する方法も
またいろいろである。ときには、労働者が不満を個人的に解決してしまう場合もあるし、解
決にはならないがあきらめてしまう場合もあるだろう。労働組合にとって必要なことは、こ
の数かぎりない不平・不満を組織的に解決するために、それを要求にまとめあげていくこと
である。あきらめてしまったり、個人的に当面をつくろったりという消極的な方法ではなく、
労働者がまとまって闘えば、不平・不満は解決できるという確信を呼び起し、現実にそれを
解決していくことである。
要求の多様化 労働者の不平・不満と要求は、資本主義的生産の発展とともに必然的に多様化す
る。第一に、資本は資本主義的生産の発展につれていままでの搾取方法を強化す
るだけではなく、新しい搾取の方法、形態をくふうする。たとえば、資本主義の
初期においては、資本は主として労働時間の延長、親方の監視・監督、出来高給(個数賃金)
の採用で搾取を強める方法をとった。だから労働組合の要求も、労働時間の短縮を要求し、
非人間的な監視労働に反対し、あるいは、出来高給・個数賃金の賃金形態の修正や廃止を要
求するというような単純なものであった。しかし、資本主義が発展するにつれて、資本はさ
まざまな労務管理の方法をくふうし、搾取の方法を多様化させる。労働者の不満は多面化し、
要求や闘争の方向も多様化せざるをえなくなる。
第二に、資本主義の発展とともに、労働者の知的水準は上昇し、労働者は資本の搾取強化
の複雑な諸方法のねらいを見ぬき、多くの要求をするようになる。そのうえ、労働運動の経
験が蓄積されるにつれて、資本に対決する力量も強まり、労働者はいままで漠然ともってい
た不満を要求に変える。とくに、労働者の数が増し組織率が上昇し、労働組合の闘争力が強
化するにつれて、労働者は自信をもって多様な要求を取りあげ、解決しようとする。こうし
て労働者の要求は量的にも拡大し、質的にも高まることになる。
第三に、労働者の反撃によって、旧来の搾取法を維持することができなくなった資本は
新しい搾取方法を考えだす。たとえば、労働時間の短縮要求にたいしては、単位時間当りの
労働密度の増大や生産生の向上をくわだてる。労働運動の発展、労働者の抵抗の強化にたい
しては、「労使一体論」を中心とする階級協調のイデオロギーを不断に注入するそのため
には新聞・テレビなどを始めとするさまざまなマス・メディアが利用される。労働組合へ
の抑圧も、かつてのような組合の全面的な否認ではなく、組合を形式的には認めながら、御
用組合化によって実質的に労働組合の骨ぬきをはかる攻撃が一般化する。こうして、労働者
の不満を、できるだけあきらめに変えさせるための政策も、ますます、すすめられることに
なるのだが、それによってまた、労働者の要求はいちだんと拡大し多様化するのである。
要求の発展 労働者の要求は、資本主義の発展による、搾取方法の変化や労働組合の力の増大
につれて、単に多様化するだけでなく、いっそう質の高いものへと発展する第
一に、今日の労働者に対する搾取支配は、国家の財政・金融政策、労働・通産
・厚生・大蔵などの施策と直接間接に結びついている。だから労働者の生活と権利を守り、
改善するためには、インフレや重税に反対し、全国全産業一律最賃制や年金などの社会保
障、解雇制限をふくむ雇用保障など、労働者に有利な法律制度の設定や改善を要求しなけれ
ばならない。第二に、今日、私たちの生活と労働の上に重くのしかかっているのは、個々
の企業の経営者だけでなく、その背後で政治・経済を支配する独占資本である。だから労働
者の要求も、職種や雇用形態、企業の枠を乗り越えた全労働者階級の反独占の要求という性
格を強めてくる。政府に対する制度的要求も、その性格は反独占の要求なのである。第三
に、独占資本の搾取と支配は、労働者だけでなく、多くの勤労国民層にもむけられており、
従って労働者と労働組合の要求と勤労国民層の要求とには、反独占という点で多くの共通点
が生まれており、労働組合は、勤労国民層の反独占の要求を支持して闘うようになっている。
第四に、独占資本優先の経済政策の結果、公害や過疎・過密による生活環境の破壊、食糧
やエネルギー問題が深刻化し、これらについても、労働組合は積極的な対応をせまられてい
る。
また 第二次大戦後の労働組合運動は、戦争やファシズム、植民地主義に反対し、平和や
民主主義、独立をめざす要求をかつてなく広範な労働者の要求としてとりあげ、重視して闘
ってきた。そして、現在では、資本主義諸国で経済危機が激化し、労働者と勤労国民に犠牲
を転嫁し、ファッショ的なやり方で、その危機を乗り切ろうとする独占の攻撃が強められる
なかで、世界の多くの労働者と労働組合は、独占の横暴を規制し、国の政治・経済の民主主
義を要求するまでになってきているのである。
要求の結合 労働者の一人一人が、それぞれの要求をもっているし、一人一人がたくさんの要
求をもっている。そのどれが重要であり、どれが重要でないと頭から決めつける
ことはできない。人によっては、時によっては、さ細にみえる不満がもっとも緊
急な要求であるかもしれない。幹部が勝手にそれを「小さな要求」として片づけようとすれ
ば、その労働者は、組合は自分たちの切実な要求をとりあげてくれない、という不満をもつ
ことになるだろう。どの要求も重要であり、軽い重いの序列をつけることはできない。
しかし、それでは要求はすべて並列的にとりあげられるべきものかといえば、そうではな
い。その時々の情勢のなかで、いくつかの切りはなしがたい要求を結びつけ、主要な要求を
柱として闘うことができる。
たとえば、七五年春闘で、全金は、賃金、時短、雇用、権利の四つの課題を統一的に闘う
方針をとった。また、特定の職場、労働者の層に切実な部分的要求は、労働者全体に共通す
る要求と結びつけて闘うことによって、全体のものとなる。今日の国家独占資本主義のもと
での搾取攻撃に対抗するためには、大幅賃上げなど個々の経営者に対する要求と、政府に対
する全国一律最低賃金法の獲得などの要求とを結びつけて闘うことを必要としている。経済
要求、政治要求の関連もふかまっている。このように、それぞれの要求の間の関連をつかみ、
結合することが、要求を発展させる力となる。
全国金属の要求 労働者と労働組合の要求は、このように、資本主義の発展と労働運動の前
進とともに、多様化し、発展しているのだが、そのことは全国金属がかかげる次のような要
求にも、はっきり示されている。(一九七六年度運動方針から)
@ 賃金水準の全般的引上げと金属労働者の賃金の最低の大幅な引上げ、全国全産業一律最
低賃金法の制定、所得政策反対
A 労働強化、スピードアップに反対し、賃下げなしの時間短縮による雇用の拡大、一日七
時間・週五日制の実施、有給休暇最低二週間
B 首切り・工場閉鎖・一時帰休反対、一切の労働条件変更に対する労働組合の同意権の確
立、雇用保険法の抜本的改善
C 定年延長六十歳、退職金の大幅増額
D 労働者と労働組合の権利と活動の自由、団交権の拡大
E 労働災害・職業病・公害の絶滅と完全補償
F 政府、資本家負担による社会保障の拡充、低家賃住宅の大量建設
G 公共料金の凍結、独占価格引下げ、大衆課税の軽減、インフレ収奪政策反対
H 沖縄をはじめとする日本のすべての米軍基地と米軍の撤去、非核三原則の厳守、日米安
保条約廃棄
I 平和憲法擁護、民主主義の完全確保
2 要求行動の発展のために
要求の権威 要求は労働者の多数が現実の労働と生活のなかでいだいている不満から発展する
もので、幹部の頭の中から編みだされるものでも、教えこまれるものでもない。
だから要求が真に力のあるものとなり、効果的な要求行動を発展させるものであ
るためには、次の条件が必要である。(1)労働者の多数が本当に必要としており、心の底から
願っている切実なものであること。(2)労働者がそれをかちとらなければならないし、かちと
ることができると決意し、確信していること。(3)それに直接かかわりのある労働者の圧倒的
多数を統一、結集することができ、さらに、広範な人々の支援を約束するものであること。
(4)分かりやすく明確に作成されていること。
だから要求は、幹部の指導と援助のもとに労働者全体の生活のなかから大衆討議によって
つくられなければならないのである。
要求と行動形態 要求と同じようにそれを実現するための行動形態も、幹部の頭の中で編みださ
れるものではなく、具体的な状況がどうなっているかによって選択されなけれ
ばならない。階級間の力関係を正しく評価し、相手の攻撃や策略を失敗させる
ものでなければならない。
特別の、どんな場合にも間に合う万能薬的な闘争方法というものはない。ストライキをは
じめ、職場集会、ビラ配布、リボンやワッペン、ハチマキ、ゼッケンの着用、ビラはりや大
看板、懸垂幕、大衆的な決起集会、デモ、集団抗議、等々、労働者は実にさまざまな行動手
段をもっている。ストライキを基本としながら、それぞれの場合に最も適した行動手段をみ
つけだし、必要に応じて変化、発展させることが必要である。
業種、企業、職場ごとの独自闘争と産業や地域、または全国的規模での共同闘争、統一闘
争は、対立し合うものではなく、相互に補い合い、助け合って発展する。そして今日の情勢
と階級闘争の現状は、業種、産業、さらに全国的規模で、要求の共通性、統一性をますます
強める方向に向っている。その結果、闘争においても、それがはじめから全体の統一闘争と
して計画されたものであるか、全体的な闘争の個々の部分が高揚するという形をとるかを問
わず、連携と統一が強まる傾向にある。
勤労国民の支持 政府や資本家は、労働者の一つ一つの要求闘争を、「政治問題」にし、闘って
いる労働者を世論に対立させ、孤立化させようと努力している。たとえば、
「大幅な賃上げはインフレを促進し、日本経済を破壊する」「地方財政の危機
は公務員の賃金が高いからだ」などという大がかりなキャンペーンが、組織されている。だ
から要求と行動を決定し、発展、拡大するにあたっては、これらのキャンペーンの本質を明
らかにし、これを打ちやぶる教宣活動を重視して、勤労国民の支持を組織することにも大き
な注意を向ける必要がある。
幹部の責任と労働者の自覚
以上のべたように、要求と行動を効果的に発展させるためには、労働者の
一人一人が要求や闘いの問題点をよく知り、自ら判断できる状態になけれ
ばならない。また情勢について必要な情報を、たえず知らされていなけれ
ばだめである。このようにして、組合員の意見と判断を基礎におくことによって、労働組合
組織の各級機関と幹部は、どんな場合におかれても、思慮分別のある提案を出し、率直に見
解を表明して、労働者を導びくためにイニシアチブを発揮することができるのである。すぐ
れた幹部の指導性というものは、労働者の大衆から離れて少数の幹部が闘争を請負って、労
働者の利益を高めてやろうという、幹部請負の手腕をいうのではない。また、「大衆路線」
とは、組合員に対する指導的な働きかけをぬきにして、大衆の気分や意見に追随することで
もない。幹部がその責任を果すためには、組合員の先頭に立って行動し、学習することを通
じて、労働者の利益のために献身する意思と情熱、自らの指導力をきたえるとともに、たえ
ず職場の労働者との結びつきを深めることが必要なのである。
3 経営における組合組織の活動
経営は行動と組織の基礎
経営は搾取と対立の場 経営は、なんといっても賃労働が行われている場所
であり、労働力を売らざるをえない労働者が、資本によって直接搾取され
ているところである。資本家は、経営において日常的に、労働強化、スピ
ードアップ、賃金の抑制、弾圧などによって、労働者にたいする搾取を強めるため行動して
いる。経営はまた、思想の対立の場でもある。ここでは、資本家が自分の搾取する労働者へ
かける思想的圧力は、もっとも強く、巧妙で、有害である。たとえば、階級協調と企業意識
の注入、「労資一体化」政策の推進、企業間競争と企業危機の宣伝、支払能力論、賃金と物
価の悪循環論、賃金と雇用の二者択一‥‥‥等々。
他方、経営はまた、労働者が生産のために集められ、結びつけられる場所でもある。そこ
では労働者は、経営の規模に応じて大なり小なりのグループをつくり、同じ資本家、あるい
はその代理人と対立している。
こうして相いれない利害をめぐって、和解しがたい対立が生まれ、激化し、それとともな
って、資本の抑圧と搾取に拭抗する労働者の団結が生まれる。このように経営は、労働者の
共通の利益を守るために、労働者を組織できる、また組織しなければならない当然の場所な
のである。経営は、被搾取者と、搾取者、労働者と資本家が、たえずあらゆる分野において
対立する「戦場」ということができる。
経営での組合組織の重要性 さらに労働組合運動の歴史的経験に照らしてみれば、企業をこ
えて横断的な組織形態を基本とする西欧の労働組合では、経営における労働組合の組織と権
利を確立することを、重要な闘争目標とし、大きな成果をあげてきている。この点、企業別
組合の形態をとる日本の労働組合では、経営に組織があり、団体交渉その他の権利が、すで
にある程度確立している有利さがある。しかし、すでに述べたように(第七課参照)、企業別
組合という形態と関係して、企業とゆ着しやすく、団結が形骸化するといった弱点がある。
だから日本でも、経常における組合組織を、職場を基礎に地域と産業に連帯を強める方向で、
しっかりと強化することがどうしても必要なのである。これこそが、労働者の共通する利益
を擁護することから始めて、労働組合を労働者全体を結集する真の大衆組織にするための必
要な条件である。
経営における活動の改善 労働者の状態を知る 組合組織の活動を改善するためには、まず、経営で労
働者がおかれている状態、およびそこの労働者が他の経営や産業の労働者
と結びついている関係をよく知ることが必要である。また、経営のなかの、
各工場、事業所、部課、労働者のさまざまな部門の条件を考慮に入れなければならない。
組織と行動形態の工夫 利潤の増大を目的とした独占集中、技術革新により、工場の分散と
集中、労働編成上の変化が進行している。そのため、経営内での組合活動にも色々な困難が
生じている。たとえば、職種がふえたこと、オートメ化が進んでいること、交番制が拡大し
ていること、パート・社外工など差別雇用がふえていること、などのために、組合組織の構
成が古くさくなったり、集会の時間がとりにくくなったり、事実上の組織率が低下するなど
の問題が生まれている。また、昔はほとんどの労働者が、働いている工場のある地域に住ん
でいたが、いまでは多数の労働者がその工場の地域外に住み、一時間〜二時間もかかって通
勤するという例も少なくない。そのため、地域での活動や定時後の活動がやりにくくなって
いる。農業地域に新たに造成された工業団地へ移った組織などでは、近くに全金の組織がな
いなどの地域事情の悪化や交通の便が悪いなどのため、活動が停滞する例も生じている。
これらのことは、こうした困難に影響されないよう、状況の変化に適応して組織形態を考
えなおし、工夫する必要があることを示している。またこうした状況の変化は、当然、闘争
の方法、活動のやり方にも、改善と工夫の必要があることを意味している。
経営者と政府の攻撃 資本と政府は、経営内の組合活動に攻撃を強めている。憲法上の労働
三権の規定、労働組合法による組合組織と活動の保証、労働者の人権は、たえず経営者によ
って無視されている。経営における労働組合の権利に対しては、団交権の形骸化、平和義務
の押しつけ、労使協議制の拡大、「経営参加」、既得権の剥奪、法律上根拠のない「経営権」
の主張等々によって、無力化させる攻撃が行われている。そしてどんな法律も協定も労働組
合の組織と行動なしには空文化されてしまう。
従って、労働組合の行動と闘いを通じて、また組合活動の現実の必要と関連させて、経営
者と政府に対し、労働組合の権利を認めさせ、拡大していかなければならない。たとえば、
団体交渉権の拡大、経常内における活動の自由、施設利用権の拡大、安全衛生委員会の活動
の改善など。
経営における組合組織の役割
経営における組合組織の役割は、いうまでもなくその経営における全て
の部門・階層の労働者の精神的・物質的利益を、日常不断に守りぬくこ
とである。そのことがまた、もっと力強い連携のとれた運動を組織する
ことを通じて、労働者階級全体の利益を守り、全般的な目的を実現することに貢献する。経
営の組合組織における闘争の強化は、もっと大規模な地域的・産業別的・全国的闘争を起し
成功させる必要条件である。一方、全体の闘争は経営の闘争を前進させる。従って、経営独
自の闘争と全体の闘争を切り離すことはできない。
経営における要求綱領 要求綱領は、組織の団結と統一を強め、行動を組織し、労働組合の
大衆的活動を発展させ、労働組合指導部と組合員の役割を明らかにする基礎となるものであ
る。経営における要求綱領は、(1)全ての職場、事業所・経営の各部門、労働者の全階層の独
自要求を含んだものであること、(2)全労働者に共通の全国的要求と切り離さず、これを土台
にそれぞれの具体的実情に適応させ、詳しく規定したものであること−が必要である。その
ためにはまず指導部が要求綱領の起草について調査研究し、これを組合員に提起し、組合員
の問題としなければならない。要求はこのようにして、指導部の意識的な努力と組合員全体
の討議をつうじて、ねり上げられ、つくりあげられるものであり、ただアンケートの結果を
整理すればよいのでも、上級機関の決定を機械的にもち込めばよいものでもない。
民主主義と平和のとりで 経営における組合活動の役割は、なりよりもまず労働者の経済的
・社会的利益を守ることであるが、同時に、平和の擁護、核兵器の全面禁止、基地の撤去、
軍縮のためにも行動しなければ、労働組合運動の義務と歴史の伝統にそむくことになるだろ
う。また、民主主義の問題にも無関心でいることはできない。経営の組合組織としては、大
衆組織としての性格をふまえつつ、日本の民主主義の擁護と刷新、民主勢力の大結集をめざ
して活動しなければならない。
このように経営における労働組合は、あらゆる分野で重要な役割を果す。それは労働者の
利益をたえず守りながら、資本の搾取と抑圧に抵抗するよう労働者を援助し、また階級連帯
と利害の共通性についての思想を労働者の間で高めながら、より広範囲なまた大規模な闘争
のために奮闘するのである。
4 行動の統一
要求闘争発展の土台 組合の要求闘争を発展させ、効果をあげるうえで、行動の統一と強化は主要
な土台である。今日、労働組合が立ち向っている相手は、国家機構をもふく
めた強大な支配手段をもち、国際的な範囲で搾取の手段と方法を強めている
独占資本である。これに対抗する労働組合が、もっとも広範な行動の統一を追求することは
絶対に必要なことがらである。これを軽視したり、考えにいれないなら、行動そのものも、
行動の直接の要因である要求も成果をあげることはできない。このことは、労働組合運動の
歴史において、くりかえし経験してきたことであり、その教訓を通じて強調されてきたとこ
ろである。
総評はこの見地から全ての労働組合にむかって、共同行動の必要を主張してきたし、全国
金属もまた、全ての金属労働組合組織に共同要求、共同行動を呼びかけてきた。
全ての労働組合の行動の統一の可能性は増大しているが、同盟の一部幹部やこれに同調す
る人々は、いまだにかたくなな態度をとりつづけている。しかし労働者が、資本家やその政
府の搾取と支配を受けいれることに甘んじないとすれば、統一以外に他にとるべき方法はな
いのである。
統一の必要性と必然性 統一が必要であり、また達成できるものである根拠は、次のように要約でき
る。
(1)貧富の差を拡大し、階級間の不均衝を引きおこしたものは、一方では労
働組合の分裂と不統一であり、他方では資本家階級の結束の最大限の強化である。
(2)このことが真実であるとすれば、二大社会勢力、労働者階級と資本家階級の間の不均衡
を取りのぞき、労働者と勤労国民の生活水準を可能なかぎり高めるためには、労働組合の各
組織間の行動の統一を達成し、これを組織の統一へと発展させなければならない。
(3)労働組合の統一が、労働者の緊急な要求と必要にこたえるものである場合には、どんな
妨害も、その実現をおくらせることはできても、妨げることはできない。もし右翼幹部が分
裂の道を固持するとすれば、労働者は行動を統一させるためには、統一を追求する勢力の強
化が必要であることをいっそう深く理解し、統一の障害をとりのぞくために行動するように
なるだろう。
統一をめざす経営での活動 資本と政府が従来になく結束を固めて逆攻撃に出ている現在、労働者は、
職場・経営での闘いだけでは、こうした資本の攻勢に対抗できないこと、
地域や産業さらに全国的な段階で、労働者全体の願いをより一層強力に、
連携あるものとして組織する必要があることを痛感している。統一を実現する力の源はここ
にある。統一は、かぎられた幹部の話し合いだけで実現するものではない。共同行動、統一
行動の実現をめざす、経営における労働組合組織の活動が強化されなければならない。
共同行動、統一行動は共同要求、統一要求から出発する。従ってなりよりも、経営におけ
る労働者の独自の要求と、地域や産業に共通する要求とを密接に結びつけ、経営や地域、産
業における労働者の要求と全労働者に共通する要求とを密接に結合させる必要がある。また、
同じ経営で働いている臨時工や社外工、パートタイマー労働者など、差別的雇用形態のもと
にある労働者の要求を考慮する必要がある。経営での要求綱領には、こうした共通性が反映
されなければならない。この要求をもとに、経営における労働者の闘いを前進させるなかか
ら、労働者全体の利益は共通だという思想がたかまり、経営者の全国的な団体や政府に対す
る全体の統一した大運動が実現するのである。
地域における共同行動 経営を基礎に、全国的な労働者の統一した行動をめざすうえで、産業別の統
一行動を軸にしながら、地域における共同行動を強化することは、きわめて
大切である。なぜなら、同じ地域で、類似した社会的、経済的条件のもとで
働いている労働者の間には、共同行動を可能にする切実な要求、課題が多く存在しているか
らである。現実にも、地域段階での共同行動・共闘組織には、中央段階に比べて、より一層
広範な労働者と労働組合が参加している。たとえば金属産業をみても、地域の金属共闘組織
や共同行動には中央金属労協に加盟している、全電線、全造船機械、全国金属以外の単産に
所属する労働組合や、産業別組織に加入しない友好組合の多くが加わっている。
こうした条件を最大限に生かして、地域における共同要求・共同行動を、産業別に、また
全産業の規模で意識的に追求していくことは、経営内にとらわれがちな日本の労働組合の視
野の狭さを克服し、階級的な連帯の意識を強め、全国的な統一した運動を組織するうえで、
大きな契機となるだろう。
地域の共同行動を組織するうえで、大切なことは、つねに産業別のまた全国的な運動との
連携を重視し、地方的な限界を克服していくことである。なぜなら、同じ地域には類似した
社会的・経済的条件があるといっても、それは、国家独占資本主義の経済・産業政策の枠内
のものだからであり、独占資本は、地域の産業・就業構造、生活構造を、自分の都合のよい
ように再編成し、地域全体を収奪の対象としているからである。
労働戦線統一の条件 逆攻勢のなかで、一時的には困難が増大し後退がみられるにしても、労働者
の間には統一への願いが強まっている。一九七四年の年金要求闘争、七五年
の最低賃金法や雇用保障の共同要求には、不十分ながらもその願いが反映し
ている。これらの経験は、その要求を実現するためには、反独占・反自民の労働戦線の統一、
民主勢力の連合が必要であることを、労働者の間にはっきり示しているのである。
大切なことは、行動における階級的統一は、思想的性格の前提をいっさい排除するうえに
のみ成立つといぅことである。行動の統一は共通の要求のために共通の相手と闘おうという
意思にもとづくものである。従って行動の統一の基礎は、具体的な行動であり、必然的に共
同の約束を尊重し、互いの忠誠を守ることである。
だから労働組合運動の壮大な方向(たとえば、搾取からの解放とか、そのための労働組合の役割
とか)について、意見の相違や無理解がまだ残っていても、それは、当面の利益を守るため
の恒常的な統一を妨げるものとはならない。
そのためには、労働組合の統一の条件として次の諸点が明らかにされなければならない。
− 目的については
労働者の階級的基礎にたった、資本の搾取と支配に反対する闘争に関する合意
− 統一した組織の性格については
経営者(資本家)・政府・政党からの労働組合の独立
思想・信条の諸潮流の尊重
労働組合民主主義と大衆的労働組合の諸規定の尊重と実践
これらの問題について討議をふかめ、日常闘争を通じてこの方向へと運動を発展させるこ
とが重要である。今日、政治変革についての討議が関心をよんでいることは、労働組合運動
の新たな高揚の反映である。この分野での見解を接近させることが、労働組合の統一の前進
にとって、有利であることはいうまでもない。
【設 問】
1 今日の労働組合が掲げる要求は、以前と比べどのように発展しているか。
2 要求が真に力のあるものとなるには、どんな条件が必要か、具体例をあげて考えてみよう。
3 経営(企業、事業所、職場)が運動の基礎だというのは、どうしてか。
4 地域の共闘を発展させるため、なにがやれるか、考えてみよう。
5 統一はなぜ必要か、また統一を実現するにはなにが大切か。
目次 学習のはじめに
第一課
第二課
第三課
第四課
第五課
第六課
第七課
第八課
第九課
むすび
熊谷地区労のページ