さそり座の神話・伝説

★パエトーンの馬車
太陽神アポローンの息子の一人に、パエトーンという少年が居ました。パエトーン
は、自分の父親がアポローンであることに誇りを待っていましたが、友達は誰も、
彼の父親がアポローンであることを、信じようとはしませんでした。そこで彼は、
そのことを証明するために、アポローンの住む宮殿まで出かけていきました。
アポローンはパエトーンが自分の息子であることを認めて、その証拠として、何でも
望みをひとつ、叶えてやろうと言いました。
 するとパエトーンは、太陽を曳く馬車を運転させてほしいと願いました。この申し
出に対してアポローンは渋りました。馬車を引く馬はひどく気性が荒くて、アポロー
ンでなければとうてい御することは出来ないからです。しかしパエトーンはアポロー
ンの言質を盾に取り、アポロンが止めるのも聞かずに、馬にまたがって飛び出して
しまいました。 天空をかける馬車の乗り心地は素晴らしいものでした。パエトーン
が、下界に向かって手を振ると、パエトーンの友達は驚いて見送りました。
 ところがすべてがうまくいくと思った時に、突然異変が起きました。太陽の通り道
は言うまでもなく黄道ですが、ちょうど蠍座の脇を、通り抜けようとしたとき、蠍が
馬の足を、毒針で刺してしまったのです。馬は暴れ狂い、滅茶苦茶に走り出しまし
た。 このまま放っておいては、大惨事になってしまうと見た大神ゼウスは、雷光を
放って、パエトーンを打ち殺しました。パエトーンの亡骸は、はるか下のエリダヌス
川に、落ちてしまいました。

★オリオンをさした毒虫サソリ
オリオンは海の神、ポセイドンの息子で、人気のある伝説上の人物で、いくつかの
物語が伝えられています。
 オリオンは、巨人のように背が高く、また美男子で腕の良い狩人でした。ある時
仲間達と酒を飲んで酔っぱらい、みんなに煽てられて上機嫌になったオリオンは、
つい「天下に自分ほどの腕の良い猟師は居ない。たとえ逃げ足の速い鹿だって、
自分に掛かれば、亀も同然だし、熊やライオンだって、赤ん坊のようなものだ。」
と自慢げに話しました。  それを聞かされた神々達は、余りにの思い上がりの
激しいオリオンに怒りました。  特に大地の女神の怒りは激しく、「毎日獲物が
捕れるのは、私が与えてやっているからだ。それなのに、なんという思い上がりな
んだろう。」とかんかんになりました。  怒りの修まらない大地の神は、一匹の
サソリを呼んで、「オリオンを刺し殺しておしまい」と命令しました。
 サソリは密かにオリオンに忍び寄ると、その猛毒の針を突き刺したのです。
さすがのオリオンもサソリの毒にはかないません。ばったりと倒れると、息絶えて
しまいました。 この手柄で、サソリは星座となり天に上げられました。
オリオン座も星座になりましたが、今でもさそり座が東の空から昇ると、オリオン
座は逃げ去るように、西の空に沈むのです。

前項